詩の紹介 道具 山崎夏代(2011年9月・詩誌「流」35号)
「道具」 山崎夏代
鳥の声 虫の声なら はるかにましだ/あれらは 本音だけを/ 叫んでいるのだもの
ひとの言葉は/あんまりにも手軽な道具である/本音を隠すにも 優しさを装うにも 使えて
あなたは しゃべりながら/あなたは自身を改竄してしまう/からっぽな語彙だけを口から転がし/いくつものいくつもの舌からあふれ咲かせる/ああ サヤボン玉の花だ
あなたの 使う言葉は/すでにロゴスでなく 神のものでもなく/その場 その場 をしのぐだけの/せつなの煙幕/なんという悲しい道具だ/ひとが あやつりながら/ゆがめてしまった 言葉とは
(川崎市宮前区・宮前詩の会)
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
言葉がいかにも「手軽な道具である」を作者は嘆く。共感を喚起される詩です。
「あなたの 使う言葉は/・・・・/その場 その場 をしのぐだけの/せつなの煙幕/なんという悲しい道具だ」。その「悲しい道具」を使ってこの詩を書かれたのでしょう。
ひとの言葉はクッションのようなもの、人と人の衝突を軽くさせる道具である。もともと言葉は人のこころの深層までに表す能力はない。知らないうち、日常生活に粉飾した言葉でひととひとを騙しあって、人は広告のなかに生活しているようなものである。動物のペットは言葉が話せないから、言葉のウソが言えない。言葉よりゼスチャーの方がいくらか真実なこころを伝わるかも知れない。賢明な人はその真実を見逃がさないかも。
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