著者メッセージ: 薬丸岳さん『刑事のまなざし』
みなさん、こんにちは。薬丸岳です。6月末に『刑事のまなざし』を刊行しました。
この作品は小説現代誌上で掲載した6本の短編に1本の書き下ろし短編を加えた連作短編集です。主人公のひとりは夏目信人という東池袋署に勤務する刑事です。夏目は、法務技官という少年鑑別所で罪を犯した者たちの心理を調査する仕事を経て刑事になった変わり種です。
どうして夏目は罪を犯した者たちを見守る立場から、犯罪者を追う刑事になったのか。それは10年前に彼の家族の身に降りかかった不幸な事件が原因です。
先ほど、夏目は主人公のひとりと書きましたが、この作品にはそれぞれの短編で視点となるもうひとりの主人公がいます。
その者たちはそれぞれに、重い罪を犯していたり、必死に家族を守ろうとしていたり、家族を失った苦しみを抱え絶望の淵であえいでいたり、また、仕事を超えて大切な者に寄り添おうとしています。夏目はそれらの人々と向き合いながら、事件や謎の真相を解き明かしていきます。悲しい現実を抱えながらそれに立ち向かおうとする夏目だからこそ伝えられる思いを読者のみなさんにも感じていただけたらとても嬉しいです。 (薬丸 岳)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2011年7月1日号)
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