「法政文芸」第7号(日本文學誌要別冊)創作力を競う場
編集後記によると、「本誌は創作を卒業論文として提出する文芸コースが日本文学科にできたのを機縁として、優秀な卒業論文を掲載する目的で創刊されました。今号も各ゼミナールの卒業論文から力作が5編ならびました」とある。
学生にとって卒業論文は勝負の場であり、成績評点の優劣がかかっている。そういう意味で、どれも創作への高揚心というか、モチベーションの高さが感じられる。
特集は「ジェンダーを超える文学」で絲山秋子氏のインタビューが「とっくにジェンダーなんて越えちゃっています」。純文学作家の発想のスタイルが見えて面白いが、超えることに絶対的な意義あるわけでもないので、今回だけの面白さか。
創作では糸永隆央「僕の照度はマックス〇・一ルクス」は、主人公が僕でなく「池田」というところで、微妙な距離感のある話の運び方に苦心したと同時に独創性を見出せる。自己探求精神が話の流れによく乗っていて面白かった。ただ、人生への結論めいた道に入ってしまうと、表現上では答えがどんと出てしまうので、伊藤孝美氏のエッセイにあるように、書くことが無くなってしまうかも。文学追求の精神とは別のところに行くのでは?と思わせる。無理にでもテーマを自分で創作的に作るのが課題になりそう。
掌編セレクションはそれぞれゼミの成果で、荒井真梨野「箸と妹」、石井りえ「少女偽装」、岡裕也「ウィーニティ」があり、どれもやはり目を見張るものがあり、若者の文学世界はこうなのかと、しみじみ感心してしまった。
発行所=法政大学国文学会。編集人・田中和生、法政文芸編集委員会学生編集長・狩野泰蔵。
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