「不都合の日」 関中子
晴れた日の湖水のように空はきらきら波うち/もっとも美しい瞳をさがして人をうつす旅をつづける/かなわない夢がかなわないままの日をねがって物語をつづり/地上を永遠に地球にひきとめたい
スライド式の戸をあけると太陽が/木々や川や風とともに/ガラスの橋をわたる/観光バスのガラスの床をしたから見あげる/観光客の椅子は回転し/自在に停止できる/だけとあらわれるのは目に見えるばかりで/何ひとつ手にとれない絵のような姿/わかりきった行楽/手はさしだされたとびきりの朝食をたのしむ/枝々をさえずりわたる小鳥の声は特別の集音機からきこえるが/それと窓外のこの絵のような姿とは一致しているのか/このバス料金ではそれはかなり疑問/その疑問を乗車まえに思ったことをおぼえていますか
人々は休養をとおりすぎる/遠い日はとおりすぎる/すでに明日をとおりすぎたので
人々はいつもここにいない/自分のいるところにいない/遠い日に生きる/遠い日に生まれる/不都合な日だ
関中子詩集・「愛する町」より2011年6月 東京都・思潮社
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
人間は未来への期待で生きる。期待されないものは不都合である。人間は、誰もが不都合の日、場所に生まれることがほとんどだ。親とか病院とか言い渡される予定日に生まれる。果たして、それが都合の良い日であるかどうか、誰で教えてくれない。成長、教育、仕事などなど、いろいろな規制を通らなくてはならない。
作者は観光バスツアーをしていたのか、時の移ろい、風景の移ろいを鋭く視て、視線はすでに遠く未来へ周遊している。
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