« 文芸時評6月(毎日新聞6月26日)田中和生氏 | トップページ | 著者メッセージ: 薬丸岳さん『刑事のまなざし』 »

2011年7月 3日 (日)

同人誌「弦」89号(名古屋市)

 最近、同人誌に作品を書こうと思っているが、送られてくる雑誌の作品が皆さん巧いので、なにもわざわざ自分が書かなくてもいいじゃない、と思ってしまう。うまいうまいと感心しながら作品の紹介文でも書くのが性に合っているのか。
 本誌では巻末に受贈誌、受贈本のリストがある。雑誌約70誌、本10冊になる。長い活動を思わせる。
【「長い終楽章」長沼宏之】
 主人公は、40年勤めた会社から傍系会社の役員を2期勤めた。半年後に定年退職を控えて、妻が突然「家事をやめます」と宣言し、何もしなくなってしまう。
 妻の外での社交活動は変わらない。習い事や文化活動は相変わらず盛んで、家事だけ夫にさせる。ただ、社交の友人知らせで、人柄的に感情の変化激しくなったとあり、昔の同窓生の医師に相談すると、躁鬱病か何かの病気との境界線で、ストレスを与えないようにしたら、とアドバイス。
 こう、粗筋を書いていると、身にしみて頭が痛くなる。長い間に生まれた夫婦の溝がうまく表現されている。
 妻や子供に対しての無理解だった過去の主人公の行動を、妻がちくちくと刺す。主人公は感慨する。「夫婦であっても、もとをただせば他人同士だ」「なぜこの人を人生のパートナーに選んだのか。自由意志の選択と見えて、実際にはすべて外界からの照り返しに過ぎない幻想の自己を受入れ、与えられた価値感の枠の中で行動した結果に過ぎない。それがリスクの少ない道だと本能的に知っていたからだ」とある。こんなところで、なるほどそうだなあ、と頷いてしまう。
 主人公は「人の気持ちがわからない」「冷たい人」と過去の罪状を裁かれながら、妻との心の接点を探して努力する。感動的なところで終わる。まだ、子供たちから弾劾されていないのも、救いなのか。フィクションに体験を盛り込んだような、具体的なエピソードが生きている。妻の家事に感謝もせずに、同人誌活動に力を注ぐ亭主族に推奨する一編である。
発行所=〒463-0013名古屋市守山区小幡中3丁目4-27、中村方、「弦の会」。

…………………… ☆ ……………………
情報の多様化に参加のため「暮らしのノートPJ・ITO」ニュースサイトを起動させました。運営する団体・企業の存在感を高めるため、ホームページへのアクセスアップのためにこのサイトの「カテゴリー」スペースを掲示しませんか。文芸同志会年会費4800円、同人誌表紙写真、編集後記掲載料800円(同人雑誌のみ、個人で作品発表をしたい方は詩人回廊に発表の庭を作れます。)。企業は別途取材費が必要です。
連携サイト穂高健一ワールド

|

« 文芸時評6月(毎日新聞6月26日)田中和生氏 | トップページ | 著者メッセージ: 薬丸岳さん『刑事のまなざし』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文芸時評6月(毎日新聞6月26日)田中和生氏 | トップページ | 著者メッセージ: 薬丸岳さん『刑事のまなざし』 »