詩の紹介「わたしの竹取物語」情熱のゆくえ 山崎夏代
日の最後の輝きが野末を金色に染める/枯れた木に絡み付いた枯れ蔦/烏瓜 ひとつ/めくるめく赤く/その輝きが わたしには つらいのだ/失われた 情熱の 化石
かつて、たしかに美のはてしない憧れをもっていたはずだ。/それはどこへ消え去ったのだろう、/きらめいて冷たいわたしのかぐや姫
✰中略✰
かぐや姫の求婚者、番外編は時の帝だ。五人の求婚者には嘘ばっかりの要求をした姫も、帝には素直だ。この章でかぐや姫は形而上的な美ではなく、人間の姿をした女に変わってしまう。帝に恋をしたのか、この世の最高権威の妻の座と/天上の己が身分とをちらりと比較したか。天の命令には逆らえない、帝に未練を残しながら、泣く、泣くかぐや姫、満月の空に帰っていく。形見に残した不老不死の薬。帝の病気を心配したなら病気を治す薬だけでよいものを。姫は月世界では不老不死、この世をそっとのぞきこみながら、帝が永遠に自分を思い出してくれるのを、満月の夜は天を仰いでため息をつくのを願っていたに違いない。富士山の噴火口に薬を捨てさせたとは、帝は賢明だった。望んでも望んでも得られぬものを、不死身になって永遠に望み続けねばならないとは、あまりにも残酷だ。あるいは、美というものの本質、その残酷さにあるのだろうか。
夢と憧れは 残忍さを懐に/青春をよぎっていったか/情熱の行方を/わたしは冬の野末の果てに求めている
詩誌・「流」34号により 宮前詩の会 2011年 3 月15日 川崎市
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
月からやってきて月に帰った美の宇宙人、かぐや姫。この世のものでない美貌に翻弄される天下の男たち、ひとりの例外、時の帝がいる。しかし、彼はかぐや姫の別れの形見としての不老不死の贈り物「富士山の噴火口に薬を捨てさせた」とは、「満月の夜は天を仰いでため息」を続けることを拒否した。
真善美の価値観で美の永遠性を信じたい人の心。美が美であるのは、時間を超えると思う錯誤があるから。しかし、現実は時間を超えない。得られないものを求め続ける、「人間」は愚かなのか、人間は忘れっぽく、情熱とはウオーミングしないとやがて凍ってしまうのでしょうか。《参照:事典「かぐや姫」 》
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