詩の紹介 「鉄の扉」 作者・吉川千穂(「詩と真実」3月号)
詩の紹介 「鉄の扉」 吉川千穂
精神科閉鎖病棟 午前六時/蛍光灯が一斉にともる
東の空の太陽に目を細め/遠い手稲山の稜線を辿る/窓の隙間から入り込む清らかな風/自由の匂いだ
憧れは日に日に増して私を苦しめる
日が昇り 沈んでゆく/慟哭は一滴たりとも外に漏れず
廊下を徘徊 五往復/彷徨う足にあてはない
すべての私物につけられた名前/千の眼を置くナースステーション/私と外を繋ぐ一台きりの公衆電話
みな苦しくて 生きていることが苦しくて/肉体の牢獄に囚われていた歳月のすべてを/私は未だ語ることができない
月刊文芸誌「詩と真実」3月号No741 より(H23年2月25日)熊本市出仲間
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
精神病棟の内と外です。重く冷たい鉄の扉に囚われた身体。囚われることで、新たに生まれる精神の挫折。
「千の眼を置くナースステーション/私と外を繋ぐ一台きりの公衆電話」監視されて、外界とは連絡し合う自由を求める気持ちは失われない。
拘禁と精神障害の二重苦は、「みな苦しく 生きていることが苦しくて」それを語ることは、さらなる三重苦になる。封印された日々はなんであったのか。いつになったら、生きる楽しさを知り、過去を楽しく語れる日がくるのか。ここに表現することで、作者はやっと過去の「鉄の扉」の前にたどりついているのかも知れない。
野の花はひたすら咲いて黙って散る。鳥はねぐらに悩まずひたすら空を飛ぶ。悩む素因をもつ人間に、果たして健康な精神というものが与えられているのか、を考えさせる。
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