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2011年3月19日 (土)

著者メッセージ: 磯崎憲一郎さん 『赤の他人の瓜二つ』

 『赤の他人の瓜二つ』は私の五冊目の小説になりますが、今まで書いた中で一番長い小説です。この小説の中盤に真夏の猛暑の場面が出てきます。高温の蒸し風呂のような暑さに、主人公は気を失って病院へ運ばれてしまうのですが、寒さも緩み、花粉に悩まされる季節となった今ではもうあまり思い出す人もいなくなってしまった去年の、二〇一〇年の夏、新築した家にエアコンを取り付けなかったばかりに私は、汗が噴出し止らない、セミすらも鳴くことを止めてしまうほどのあの恐ろしい暑さと戦いながら、小説中のその猛暑の場面を書いていたのです。
  観測史上例を見ない暑さだったと言われる二〇一〇年の夏を思い出すとき、過去の現実の暑さを思い出しているのか、それとも『赤の他人の瓜二つ』という小説中の暑さを思い出しているのか、私にはほとんど区別が付かなくなるのです。(磯崎憲一郎)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2011年3月15日号)

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