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2011年1月28日 (金)

詩の紹介 蚊とリズム 菊田 守

「蚊とリズム」   菊田 守

十一月の暖かな夜に/寝室のスタンドの明かりを暗くすると/きまってぶーん
とやってくる蚊/どこに隠れているのだろう/箪笥の裏か 額の後ろか/スタンドの蔭なのか/鏡台の下からか/現れては/わたしの顔の上を旋回する/うるさいので横を向くと/耳元にやってくる蚊

パチンと狙いを定めて手を叩く/逃げられる/しばらくすると/また ぶーんとくる/パチン また逃げられる/ぶーん パチン ぶーん パチン/何時まで続くのか/蚊との小さな戦いはー。

わたしが寝付いた頃/蚊はわたしの身体に吸いついて目的を達成する/朝起きたとき/わたしの首筋にある/蚊に刺された赤い跡/血ぶくれした蚊は 昼間/きっとゆっくり休んでいるのだろう

今夜もやってくるのだろうか/昨夜の蚊は。/考えてみると/蚊とヒトは血が体内に流れている/同じ地球の生きもので/大宇宙の仲間でもある訳だ/ぶーん ぶーん パチン/ぶーん パチン/また始まる今夜のリズムだ/なんとなく快いリズムだが/蚊には哀しい音なのだ/ぶーん パチン/ぶーん パチン/いつまでも/聞こえている間は大丈夫だ/お互いにーー。
菊田守詩集「白鷺」より 1999年7月 東京都 土曜美術社出版販売

紹介者 (詩人回廊) 江素瑛
宇宙的な視点では、人は小さい存在だが、蚊はもっと小さい。体内に同じ血が流れる兄弟という結社は、有志者達に傷口の血を混ぜる儀式をする。人間と蚊の間にいとも簡単に出来るものだ。生きものたちは皆仲間という発想で、小さな吸血生物に癒される作者の宇宙観である。
ぶーん パチン/ぶーん パチン/菌を持つ蚊なら、「蚊インフルエンザ」が流行るかもしれない、なんとなく飛行機の自爆テロを連想させ、蚊には哀しい音だ/しかし人間には怖い音だ、快いリズムのところではなかった・・・・。
聞こえている間は大丈夫/血の兄弟を全滅させることなく、少し生かせれば・・・・・・。

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