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2010年12月21日 (火)

森美根子氏の見識が光る『台湾を描いた画家たち─日本統治時代 画人列伝』

  『台湾を描いた画家たち─日本統治時代 画人列伝』(森美根子著・産経新聞出版)は、日本統治期に活動した台湾人18人(倪蒋懐、黄土水、陳澄波、藍蔭鼎、陳植棋、顔水龍、楊三郎、李石樵、李梅樹、李澤藩、廖繼春、洪瑞麟、蓼徳政、許武勇、林玉山、郭雪湖、陳進、林之助)、それから台湾の風物に魅せられた日本人3人(石川欽一郎、塩月桃甫、立石鐵臣)、合計21人の作品と精神を紹介したもの。

  台湾と日本の文化交流は、植民地として日本が統治した時代の影響を多く受けている。それが絵画の世界ではどうような様相を呈していたのか。画人列伝としての作品と境遇が仔細に追跡されている。とくに著者は、人間の絵画を生命体の発する輝きとしてとらえているらしく、アーチストの作品を徹底した鑑賞眼をもって検証している。この時代の台湾と日本の絵画交流を生命体と生命体の出会いとする意識によって、論評の普遍性、公平性に説得力をもつ。
  作品を言葉で的確に表現する筆力に長け、自由と自律性を尊ぶ精神がにじみ出ている。国際的な情勢にゆさぶられてきた台湾の歴史は、日本にとっても未来のあり方を示唆するものをもっており、さまざま歴史観のなかでの文化交流の基本姿勢に学ぶべきものがある。

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コメント

 日本と台湾で戦時中画家として活躍したらしい院田繁の息子の忠博です。日台友好交流センター様に一度調査依頼を出したことがありました。調査員の永吉美幸様 東大大学院の邱 ハンニ様にお骨を折って戴きました。インターネットで「院田繁」で検索すると台湾美術史研究家の方全員が父の作品を紹介してくれています。最近その数に私は圧倒されてしまいました。ただの貧乏絵描きの家で働く事を嫌い、ゴーギャンのように南の島で絵を描いて暮らしたいと漏らしていました。戦争がなければそのようなことができたかのしれません。私が調査するとモノクロ写真ばかりで、原色で見ることができたら87歳の老いた母に見せてあげたいと考えております。

投稿: 院田忠博 | 2013年5月 3日 (金) 10時51分

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