「季刊文科」50号から~増田一郎「彩雲」発行人のレポート
〈同人雑誌の現場から〉の欄に「文学と同人誌の役割」という題で、同人誌「彩雲」《参照:同人誌「彩雲」のひろば》発行と第3号までの経緯が印刷費や会費などの実情を交えて記されている。
冒頭では同人雑誌の意義についてこう述べている。「戦後の食糧難を克服するため家族共々開拓地に入植し、原野を一鍬一鍬開墾しながらわずかな食料を収穫して独力で生き延びた。その過酷なまでの境遇を生き抜いたことで、強靭な肉体と精神力が厳しい時ほど強く求められることを知った。そこには勿論、邂逅によって得られた大勢の人達の力添えを忘れてはならないが、もっともっと大切な物があることにきづいた。ややもすれば挫けがちな自分を支えてくれたもの、それは微かではあるが、心の中に文学の灯火を燃え続けたことが大きな要因だったと自負している」とまずある。
生活を支える精神の確認の場として、同人雑誌の存在理由のひとつであることを示しているのが鋭い。小説の技巧や、文章修業の成果を発表する場のほかに、生活の思いの表現を発表する機能があることが、同人誌を維持継続させる原動力であることを再認識させられる。この要素を自覚すれば、同人雑誌が今後さらに力強い拡大を続けることが予測できるはずだ。
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