詩の紹介 ダンスをする母 長谷川修児
ダンスをする母 長谷川修児
母はダンスを踊っていた 眠り込む母に手をさしのべる老紳士 手をあずけて立ちあがる母 広いフロアに優雅に踊る 母が踊るなんて信じられない 赤い
小さな水玉模様のパジャマを着て 眠った母が踊る 波のように静かに滑っていく 崩れそうになる腰を紳士の腕が優しくささえて未来へと踊っていく
ねじれるベンジャミン
ああ母さんやめて
ダンスをやめてベッドで眠って
(紹介者「詩人回廊」江素瑛)
人間の無力さを感じさせながら、ユーモラスなものになっている。
「紳士の腕が優しくささえて未来へと踊っていく」亡くなった父親か、次の別世界への使者か。老紳士が眠り込んだ母をリードして遠い未来へ連れていく。母がずっと居てほしい気持ちといずれ居なくなる覚悟。作者の不安が募る。
「踊らないで、踊るのをやめて、ベッドにそのままで居て」踊りながら次第に遠ざかる母を止めることもできない作者の叫び。
長谷川詩集「 緋」より 2010年 4月 新原詩人No,29 転載
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