文芸時評10月(東京新聞10月27日)沼野充義氏
楊逸「陽だまり幻想曲」生が秘めるおぞましさ/大森兄弟「まことの人々」違和感に満ちた味わい。
《対象作品》トルコのノーベル賞作家・オルハン・バルク「新しい人生」(安達智英子訳、藤原書店)/楊逸「陽だまり幻想曲」(群像)/すばる文学賞・米田夕歌里「トロンプルイユの星」(すばる)/新潮新人賞・小山田浩子「工場」(新潮)/大森兄弟「まことの人々」(文藝)。
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この時評のなかに、雑誌「文藝」の公募で最有力候補作がインターネットのサイトを剽窃した疑いが濃厚であったため該当作なしとなったことが記されている。剽窃はよくないのは確かだが、膨大なネット情報のなかから、よくぞ気が付いたものだ。
また剽窃した者も、これぞというフレーズをみつけて作品に展開したのだとしたら、かなりの技術ではないかと思う。 作品にネットでこういうものが書いてあった、と出典を明らかにし、ネットの作者に了解をとるという方法ではだめだったのか。現代は、コピーをさらにコピーし、増幅させるのがネットの特質なので、これは時代の特徴でもある。対応策を創作手法として確立できないのか。
他者の作品の利用を明確にしたものを作品中に入れたことを示すパターン形式をつくるとか、したらどうであろう。
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