« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »

2010年10月31日 (日)

同人誌「風の森」第13号(東京)

【「夢遊の時代(青いトランク)」遠矢徹彦】
 この作者の作品を3作ほど読んでいるが、どれも文章力が強く、腕力で惹きつけて読ませる作風である。どこがどうといっていると、きりがないが、今回の作品は全共闘時代の革命騒動の精神が、青いトランクのなかからぞろぞろと出てきて、手品を見るように主人公の放浪の精神が遊びまわり、またトランクに収まるという仕掛けに読めた。エネルギーは前作ほどの勢いがないが、その分、形式的にいちばん纏まっているので、諧謔いうか肩の力を抜いてイロニーが利いて完成度が高いように思えた。

| | コメント (0)

2010年10月30日 (土)

文藝時評10月(毎日新聞10月27日)田中和生氏

<一人称のリアリズム>「語る主人公日本語ならでは」「ポストモダン的否定を覆す」
《対象作品》広小路尚祈「きんぴら」(群像)/大道珠貴「きれいごと」(文学界)/大森兄弟「まことの人々」(群像)/小山田浩子「工場」(新潮)/連作短編集・野中柊「昼咲月見草」(河出書房新社)。

| | コメント (0)

第1回山田風太郎賞に貴志祐介さん

 第1回山田風太郎賞(角川文化振興財団など主催)は、貴志祐介さんの「悪の教典」(文芸春秋)に決まった。賞金は100万円。贈呈式は11月24日。


| | コメント (0)

2010年10月29日 (金)

同人誌「淡路島文学」第5号記念号(兵庫県島州本市)

【「むらさきの煙 島の辰造」蘇我文政】
 身近に接するお線香の産地が、淡路島の江井というところにあることをこの作品を読んで知った。話は江井というところで、主人公の辰造は、上方の紺屋に奉公に行き、そこでの職人技を捨て、故郷の江井に戻り線香造りの元祖となって地域産業のもとになる。だが、現在はあまり知られず、地元の寺の小さな墓地があるということである。
 漁具や持ち船などの生産手段をもたないで、浜辺の海藻をとって暮らす磯乞食とよばれた人たちの家系から奉公に行った男が、村人のひややかな視線のなかで、線香づくりをはじめ、ついに成功者となる。その仕事の犠牲となった息子の病弱な様子と、家族の運命が身にしみて伝わってくる。
 身振りの大きな逞しい文体で、視座を大きく構えたもの。そこに人間味をもった語り口があり、大変魅力的である。風景の形容も随所に光るものがあり、潮の匂いが全編にただよう。史実をよく噛み砕いて挿入されているらしく、大変面白く読める。素朴さを装いながら、練達の語りといってよいであろう。とにかく勉強になったし、感銘を受けた。

| | コメント (0)

2010年10月27日 (水)

【文芸月評】10月(読売新聞文化部待田晋哉)10月26日

善悪の境 揺れる存在・身近に求める足掛かり
《対象作品》『悪人』吉田修一氏(42)/中村文則氏(33)『悪と仮面のルール』/大森兄弟「まことの人々」(文芸)/小山田浩子氏(26)「工場」(新潮)/中上紀氏(39)「リヤの座礁船」(すばる)/穂田川洋山氏(35)「あぶらびれ」(文学界)/西村賢太氏(43)「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」(新潮)/長野まゆみ氏(51)「デカルコマニア」(新潮8月号~)。 (文化部 待田晋哉)(2010年10月26日 読売新聞)

| | コメント (0)

2010年10月25日 (月)

遠野物語100周年文学賞 

遠野物語100周年文学賞 (賞金100万円)
締切・2011年1月31日

| | コメント (0)

2010年10月23日 (土)

詩の紹介  「痛み」  門林 岩雄

「痛み」  門林 岩雄

深手を負って
たおれていると
あざけりながら すぎるもの
わらって石を なげるもの
「それはそれは」と
唐辛子 ぬりにくるやつ

ことばはいらない
だまって傷口 なめる人
そういう人をこそ
友とよびたい

(紹介者「詩人回廊」 江素瑛)
必要な時に居てくれて、傷口を癒してくれるものは理想的な友達である。「他人の頭痛はいくらでも我慢できる」ということわざがある。人間が人間らしくあるためには他人への想像力が必要である。

門林岩雄詩集「梅園」より 2010年9月 東京都 土曜美術社出版販売

| | コメント (0)

2010年10月19日 (火)

第58回菊池寛賞に筒井康隆さん、金子兜太さん

 第58回菊池寛賞(日本文学振興会主催)は、純文学、SFなどに独自の世界を開拓した作家生活50年の筒井康隆さん、90歳を超えて旺盛に句作し現代俳句を牽引(けんいん)する金子兜太さんら、6個人・団体に決まった。副賞各100万円。その他の受賞者は次の通り(敬称略)。
 NHKスペシャル「無縁社会」(人間の絆=きずな=を失い孤立化する日本人の姿を取材)▽宇宙航空研究開発機構(JAXA)「はやぶさ」プロジェクトチーム(小惑星「イトカワ」への着陸と帰還)▽吉岡幸雄(「染司よしおか」当主として、伝統的染色法を探求し古代色も復元)▽中西進「万葉みらい塾」(グローバルな視点で「万葉集」の研究・普及に努める)(2010年10月16日 読売新聞)

| | コメント (0)

2010年10月16日 (土)

新・同人雑誌評」「三田文學」第89巻・秋季号2010.11.01発行

対談「新 同人雑誌評」勝又浩氏・伊藤氏貴氏
有森信二「風の呼ぶ声」(「海」70号、福岡市)、有坂広一「煽動者」(「じゅん文学」63号、名古屋市)、銚布坂大「ガラスの部屋」(「とぽす」48号、茨木市)、山田梨花「有やけの街」(「とぽす」48号、茨木市)、難波田節子「雨のオクターブ・サンデー」(「河」155号、東京都)、米沢朝子「水際まで」(「高知文学」36号、高知市)、鵜瀬順一「螺旋」(「あるかいど」40号、大阪市)、有芳凛「余り石」(「じゅん文学」64号、名古屋市)、西尾イースト「横断歩道」(「じゅん文学」64号、名古屋市)、篠原ちか子「いのちの場所」(「風紋」5号、富山市)、森まりも「秩父線ワンダーツアー」(「私人」69号、東京都)、隈部京子「もうすぐその時が」(「小説家」132号、東京都)、石井利秋「小屋に住んでいた老人」(「小説家」132号、東京都)、朝岡明美「レモンスカッシュ」(「文芸中部」84号、愛知県東海市)、宮内はと子「凍てて凍てつくイテイテテ」(「カム」6号、奈良県桜井市)、明森まつり「海のハト」(「じくうちⅡ」21号、藤沢市)、和田信子「月の夜は」(「南風」27号、福岡市)、森岡久元「小石の由来」(「酩酊船」25号、兵庫県宍栗市)、「花本さんとヒカルくん」(「酩酊船」25号、兵庫県宍栗市)、西田宣子「おっぱい山」(「季刊午前」42号、福岡市)、村山嘉緒「小春日和」(「無名群」89号、弘前市)、森野いつき「デジャヴュ」(「サボテン通り」10号、函館市)、塚越淑行「アイリッシュラメント」(「まくた」268号、横浜市)、木戸博子「樹木の話」(「石榴」11号、広島市)、岡田雪雄「宝の山」(「弦」87号、名古屋市)、森静泉「じいちゃんの夏」(「狼」56号、高崎市)
ベスト3
勝又氏:「雨のオクターブ・サンデー」(「河」)、「アイリッシュラメント」(「まくた」)、「余り石」(「じゅん文学」)
伊藤氏:「凍てて凍てつくイテイテテ」(「カム」)、「雨のオクターブ・サンデー」(「河」)、「小石の由来」(「酩酊船」)
推薦作:難波田節子「雨のオクターブ・サンデー」(「河」)
「難波田節子さんの作品が掲載された同人誌」として「河」、「季刊遠近」の表紙画像を掲載。
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

| | コメント (1)

2010年10月15日 (金)

芥川・直木賞選考委員に島田雅彦さん、伊集院静さん,桐野夏生さん

 日本文学振興会は、来年1月の第144回芥川賞の選考委員に島田雅彦さん(49)を、直木賞の選考委員に伊集院静さん(60)と桐野夏生さん(59)を加えると発表した。芥川賞の選考委員は10人、直木賞は9人。島田さんは芥川賞は未受賞。伊集院さんは1992年、「受け月」で第107回直木賞、桐野さんは99年、「柔らかな頬(ほほ)」で第121回同賞を受賞している。

| | コメント (0)

2010年10月14日 (木)

同人誌時評9月「図書新聞」(2010年10月9日)たかとう匡子氏

「群系」第23号(群系の会)より坂井健「『七つの子』の解釈」、「シリウス」第20号(シリウスの会)より宇野秀「『赤い靴』論争に思う」、「吟遊」第47号(吟遊社)より夏石番矢の訳、「木木」第23号(木木の会)より小松陽子「砂嵐」、「詩と眞実」第734号(詩と眞実社)より内田征司「天空の船」、「空の引力」第30号終刊号より伊与部恭子の詩「球根」
「朝」第29号「追悼・宇尾房子」、「視点」第73号「追悼・柿崎五助」、「風土」第10号「山下禎彦追悼特集」、「水晶群」第59号「伜山紀一追悼特集」
2紙のコピーといろいろを送ってくださった馬の骨さん、いつもありがとうございます。
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

| | コメント (0)

2010年10月12日 (火)

第1回 立川文学賞

第1回 立川文学賞 2010年11月30日 大賞:30万円

| | コメント (0)

2010年10月11日 (月)

文芸同人誌評「週刊読書人」(2010年10月1日)白川正芳氏

北畑隆生「小説 鹿島アントラーズ誕生物語」(「シリウス」20号)、三木祥子「シベをかぞえる」(「雑木林」13号)、熊谷文雄「石のキズ…奥泉光『石の来歴』」(「異土」創刊号)、橋本一郎の連載「人間・手塚治虫」(その1「ビランジ」26号)
二ノ宮一雄「神尾先生の眼鏡」(「架け橋」創刊号)、平井文子「芙紗子の一日」(「まくた」269号)、内田征司「天空の船」(「詩と真実」734号)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

| | コメント (0)

2010年10月10日 (日)

出版社がいきなり「文庫版」で刊行する理由は

いきなり「文庫版」 理由は読売新聞2010年10月8日記事

| | コメント (0)

2010年10月 9日 (土)

月刊文芸誌「詩と真実」10月号(熊本市)

月刊でよく作品が集まると感心する。「合評会記」という欄があって、感想があるのが面白い。20人以上が参加するようなので、活発なものだ。
 詩作品に【「不安な色―青と緑について」池崎輝夫】があって、色弱であることの個性を異邦人的な自意識で表現するのが、必然性をもったものとして印象に残った。
 【「かぶく清正」蓑田正義】
 戦国時代から権力者の監視の眼を意識ながら、人心をとらえる武将・加藤清正の行き方を落ち着いた筆致で描く。時代背景や考証が行き届いて、面白く読んだ。作品全体がきちんと整っていて、品格のある作風が印象に残った。編集後記によると、2004年に歴史物の短編集「まりやの旗」を上梓しているというので、書き慣れているのが納得できる。
 発行所=〒862-0963熊本市出仲間4-14-1、詩と真実社。

| | コメント (0)

2010年10月 8日 (金)

第23回柴田錬三郎賞に吉田修一さん

 第23回柴田錬三郎賞(集英社主催)は、吉田修一さんの「横道世之介(よこみちよのすけ)」(毎日新聞社)に決まった。副賞300万円。

| | コメント (0)

「鉄道林」(国鉄北海道文学改題)創刊五十年記念号(札幌市)

 編集後記によると、1973年に創刊し、分割民営化で名称を変えて37年間存続してきたという。内容は鉄道に関するものだけで、公共的な仕事場への愛着を感じさせる。多くの文学賞を受賞した作者も輩出しているようだ。
 現在は書店ではムックでテッちゃんブームとかで、「国鉄時代」などの本も存在する。それはSLであり、鉄道車両のデザインであり、夢とロマンをそこに見る現代人の世界である。その鉄路の背負った過去や過程は無用のものとする。時代の路線の違いというものを感じさせる。
【「秘密」山内香波】
 夫の浮気に直面した女性の心理をぐいぐいと機関車の牽引のよう物語にする力に面白さを感じた。
 発行所=札幌市北区北34条西11-4-11-209、北海道鉄道文学界。

           ☆
創刊50号記念号の主な収録作品は次の通り。
☆創作=柴田耕平「一等兵曹殿に敬礼」、松田静偲「新米助役奮闘記」、山内香波「秘密」、福田和幸「網走発函館行き 特急『おおとり』南へ走る」、海邦智子「有終」。☆随想=米田勉「『残響』との出会い、そして…。」☆俳句=中西徳太郎「青空を痛めず」☆短歌=金山昭市「ライラック」、宝田弘「米寿の祝い」☆随想=近成昌之「官舎の思い出」、斉藤孝裕「新・ゆううつな出会い」、中野省三「或るどさんこの一生(6)」☆評伝=川口順啓「道参の画伯・山口逢春(3)」☆資料「鉄道林」(旧「国鉄北海道文学」)総目次。
 「鉄道林」編集室=札幌市北区北34条西11丁目4番11-209号、北海道鉄道文学会。

| | コメント (0)

2010年10月 7日 (木)

文芸時評9月(毎日新聞9月29日)田中和生氏

<偽史>「戦後世代が徹底した戦後文学」「自閉を破るリアリズムとは」
《対象作品》津原泰水「瑠璃玉の耳輪」(河出書房新社)/北野道夫「泥のきらめき」(文学界)/川崎徹「会話のつづきーーロックンローラーへの弔辞――」(群像)/村田沙耶香「ハコブネ」(すばる)。

| | コメント (0)

第9回「このミス大賞」に乾氏の「完全なる首長竜の日」

第9回「このミステリーがすごい!」大賞(宝島社、NECビッグローブ、メモリーテック共催)は、乾緑郎氏の「完全なる首長竜の日」に決まった。応募総数は408作品で過去最多。同氏には賞金1200万円が贈られる。優秀賞は喜多喜久氏の「ラブ・ケミストリー」と佐藤青南氏の「羽根と鎖」で、それぞれ賞金は100万円。受賞作はすべて2011年に宝島社から単行本として刊行される。

| | コメント (0)

2010年10月 6日 (水)

第90回オール読物新人賞に立花水馬(みずま)さん

 第90回オール読物新人賞(文芸春秋主催)は、愛知県出身の会社員、立花水馬さん(49)の「虫封じ●(マス)」に決まった。賞金は50万円。受賞作は22日発売の「オール読物」11月号に掲載される。●=ます記号(口の中に/)(産経ニュース2010.10.6)

| | コメント (0)

2010年10月 4日 (月)

文芸時評9月(東京新聞9月30日)沼野充義氏

野田秀樹「表にでろいっ!」現代日本の精神状態/村田沙耶香「ハコブネ」行き詰る新しい性/冲方 丁(うぶかた とう)特集「ユリイカ」文体が文学を救うか。
《対象作品》特集「来るべき世界の作家たち」、ラシュディ「プチ・マリク」(中島さおり訳)、ケイス「伝書鳩」(鴻巣友季子訳)、菫啓章「地図集」(藤井省三訳)・(文学界)/戯曲「表にでろいっ!」野田秀樹(新潮)//村田沙耶香「ハコブネ」(すばる)/冲方 丁(うぶかた とう)特集「ユリイカ」。

| | コメント (0)

2010年10月 3日 (日)

西日本文学展望(西日本新聞9月29日朝刊)長野秀樹氏

テーマ「バランス」
水木怜さん「ルイ子の窓」(「照葉樹」9号、福岡市)、井本元義さん「その日のアルチュール」(「季刊午前」43号、福岡市)
「九州文学」第七期11号(福岡県中間市)より江口宣さん「モヘンジョ・ダロ文書(1)」、西津弘美さん「流転の槍」、興膳克彦さん「謀殺」、発行人だった堀勇蔵さんの追悼特集より波佐間義之さん「永遠のライバル」
垂水薫さん「十薬美身水」(「照葉樹」)、西田宣子さん「おんじい坂」(「季刊午前」)
暮安翠さん『マドンナの帰郷』(創作研究会発行、北九州市)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

| | コメント (0)

2010年10月 1日 (金)

角川書店と角川映画を2011年1月に合併=角川GHD

 角川グループホールディングス(GHD)は30日、子会社の角川書店と角川映画を1日付で合併させると発表。出版と映像部門の連携を強化、映画に向く原作を発掘するなどして赤字の映像部門を立て直す狙い。映像部門は10年3月期まで3年連続の営業赤字。
存続会社は角川書店。雑誌事業は角川マーケティングと角川・エス・エス・コミュニケーションズを合併。角川マーケティングが存続会社となる。デジタル事業では、アスキー・メディアワークスが同社100%子会社の「魔法のiらんど」を吸収合併。また、角川コンテンツゲートが、同社100%子会社のワーズギアを吸収合併する。来年6月にはグループ会社のオフィス集約を目的に、角川書店とアスキー・メディアワークスが東京・千代田区に移転する。

| | コメント (0)

「ことばの森から」小説編<7~9月>「毎日新聞」西日本地域版2010年9月20日。松下博文氏

タイトル「幸福の行方」
加村政子「故郷崩壊」(「海峡派」119号)、渡邊眞美「愛」(「龍舌蘭」179号)、眞原賢一郎「少女とゴミ箱」(「詩と眞実」734号)
立石富生『モンブラン』(火山地帯社)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

| | コメント (0)

« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »