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2010年9月18日 (土)

詩の紹介 「扉」  弓田弓子

    「扉」  弓田弓子
ドアは、きゅうきゅう、ばだばだばたん、/奥から女のどなり声、うるさい、ドアは、きゅうきゅう、ぱたり、きききき、ばたり、/ドアに挟まる女の声、/ぎゃぁとか、うざいとか、さむいとか、でででけとか、/でていけ、とか、だいきらい、とか、/ででででででけ、とか、ででで、られないわよ、とか、/ドアに、足、はえ、/ドアは、いててて、いたいよ、骨、いたいよ、/片方、ひきずる、ひきずり、/ずるずるずる、ずりりり、ずきずき、だ、/はえた足に古靴ひっかけ、/ドアはおでかけ、あたしの靴、ひかけないでよ、/女がどなる、/かまわず、ドアは、おでかけ、ばだばだ、ぎいぎい、ぱたんぱたん、帳番はずして、/ドアは、たまには、おでかけ、/門口、あんぐり開いて、/おおあくび、/女もおでかけ、/裸足で、ばたばた、おでかけ、/おるすばんは、/風、

(紹介者「詩人回廊」江素瑛)
風と、ドアと、女とで構図された詩である。言葉の韻がおもしろい、句読点がいい、女は酒酔いかしら、夫婦喧嘩なのか、異様な情景、ぼろ古屋敷、不気味さのなかのユーモアと賑やかさ。どこの家にもある扉が、閉じて開いて人間ドラマを見せる、見事に読者のこころをとらえる。
「幻竜」第12号より 2010.9  幻竜社 川口市

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