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2010年8月18日 (水)

著者メッセージ: 森村誠一さん 『悪道』

  森村誠一と申します。
  この度、講談社百周年記念の一環として、『悪道』を書き下ろしました。 
 書き下ろしは連載と異なって、まとめた期間(少なくとも三十日以上)を取らないとなかなか書けません。久しぶりの書き下ろしとあって緊張しました。他のすべての仕事を棚上げし、訪問者は後日の約束にして(これを閉関というそうです)、仕事部屋に閉じ籠もり、ひたすら書きました。
  時は元禄、徳川期を通して最も独裁権力を振るった五代将軍綱吉の治世下、牙を抜かれた忍者の末裔と、天才少女医師がふとしたきっかけから幕府の大陰謀を見破り、圧倒的な権力に対して絶望的な戦いを挑みます。時代を元禄に選んだのは、この時期に百花繚乱、あるいは百鬼夜行というべきか、多彩な人材が犇いていたからです。
  私は、どう見ても勝ち目のない権力や、大戦力を相手取って、決して抵抗をやめない不屈の物語が好きです。『おくのほそ道』の芭蕉の足跡を追いながら、忍者と少女医師のノンストップの逃避行から反転、江戸に反攻しての絢爛たる復讐劇、息詰まる攻防のうちに、読者の想像を超える終幕を用意しました。
  エンターテインメントのエッセンスであるスリル、サスペンス、スピード、多彩なキャラが競り合う人間群像、躍動する時代環境、二転三転予断を許さぬ結末、そして全編を貫く熱気など、四十五年の作家生活で体得したすべてを注ぎ込んだのが、この作品です。
  講談社百周年、この作品をもって読者にまみえることができるのは、作家として光栄です。おそらく『悪道』はまだつづくでしょう。   (森村誠一)
(講談社『BOOK倶楽部メール』2010年8月15日号) 

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コメント

森村誠一さんの作品は、これまで数え切れないほど読んできましたが、稀に見る筆力と人間研究に秀でた作品人物の造型に感嘆してファンになって今日にいたってます。早速読んでみたいと思ってます。ますますのご活躍きたいしてます。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2010年12月 8日 (水) 16時23分

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