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2010年8月11日 (水)

文芸誌「照葉樹」8号(福岡県)

【「緋色のリボン」水木怜】
 主婦が亡くなった義母への思いと鎮魂を語った人情話。ありがちな姑としての確執のない人間的交流を描く。
【「TENDER LAVE」水木怜】
 母子家庭の幼児と母親。そこに出会った親切な「おいちゃん」との交流を描く。これもほんわかした味の人情話。

【「刻む」垂水薫】
 母子家庭で育った「私」は、結婚し高齢出産で授かった子供を、一人にしておいたために、火災が起きて焼死させてしまう。そこから夫も妻も自損行為に堕ちていくが、やがて夫婦は気を取り直し、喪失のなかで再起する気持ちになる。
 二人の作品はいいも悪いもなく、それぞれ腕の振いどころを示して、読者を楽しませる工夫をしている。その意味で、自己表現と自己探求を柱とする純文学精神とは距離を置いている。リトルマガジン的な同人誌といえるであろう。
 水木怜は「旅かばん」創刊号でも、悪女的な女性の心理をスリリングに描いていたと記憶する。まさに料理人が市井の話題を捌いてテーブルに出すような感覚であろう。

 これからは、もし中央文壇というものが存在していても、それと無縁に独自の読者獲得をしていく時代ではなかろうか。そういう雑誌に不足しているのが、ジャヤーナリズムである。ひわきさんの優れて社会性のある「文芸同人誌案内」は、その魁のような気がする。まず、雑誌の存在を広く周知させ、そこにジャーナリズムを作る。その努力が求められる時代なった。文芸同志会の同人誌への対応も形は違うが同方向に向かおうと思う。それがポストモダン時代への対応であると思う。
《参照サイト:照葉樹

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