芥川賞の赤染さん「アンネ」モチーフ、「『エースをねらえ!』も意識」
第143回芥川賞を受賞した赤染晶子さん 受賞作のモチーフとなっているのは「アンネの日記」だ。作品の構想が生まれたのは、アンネ・フランク生誕80年の昨年。「日本人の『アンネの日記』への読み方は、あまりにもロマンチックすぎるのではないか」と疑問を抱いたのがきっかけだったという。「言葉」や「アイデンティティー」といったテーマをめぐり、さまざまな仕掛けが施された作品だ。(産経ニュース10.7.15磨井慎吾)
作品の舞台は、赤染さんの母校である京都外国語大がモデル。スピーチコンテストのために「アンネの日記」の暗唱に打ち込む“乙女”たちの日常を、戯画化して描いている。「『エースをねらえ!』など、スポーツ根性物の少女漫画を意識した」とも。日本人の女の子の世界をあえて作り物めかすことで、「アンネの日記」のリアリティーを際立たせるためだ。
執筆に当たっては、オランダ国立戦時資料研究所から研究者向けの資料を取り寄せ、オランダ語版、ドイツ語版は常に手元に置いて、読み返した。作中での原文引用はすべて赤染さん自身の訳(やく)による。
当初は文学研究者を志していた。専業作家になるきっかけを提供してくれたのは「故郷・京都」だったという。
「役所の窓口で接した京都の人たちがすごく面白くて、小説にしてみたらどうかと思ったんですよ」。だから、これまでの作品はすべて京都が舞台。「京都人はイケズ(意地悪)といわれるけど、私はそう感じない。ユーモアがあって、すごく温かい」。これからも、京都人の小説を書いていくつもりだ。
「京都以外では生きていけない。ずっと京都にいたい」とまで言い切る故郷愛。作品の秘密はこんなところにもあるようだ。(磨井慎吾)
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