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2010年7月30日 (金)

第22回堺自由都市文学賞を受賞「俺は死事(しごと)人」の星野泰司さん(41)

 葬儀会社の若手社員の葛藤(かっとう)を描いた受賞作「俺は死事(しごと)人」は、僧侶である自らを重ね合わせた。葬儀で利益を追求する仕事に悩む主人公が、独り暮らしの老婦とのふれあいなどをきっかけに生きがいを見いだしていく物語。「生死は表裏一体。死と向き合うことで、生きる喜びを感じるはず」と願う。
 大阪の町工場に育ち、大学では仏教学を専攻したが、中退して小説家を目指した。30歳で再び、仏教の専門学校へ。そこで「仏教の教えは人が幸せに生きる知恵。素晴らしさを伝えたい」と、浄土真宗の僧籍を取得した。
 最初に勤めた大阪府内の“葬式寺”で、年間約100件の葬儀をこなした。布教とは無縁のビジネスに戸惑った。それでも生死にかかわった人に向き合い、悩める心を穏やかに導く活動に目覚めた。今も府内の別の寺で、檀家(だんか)らの「心の往診」に努める。
 奇抜なタイトルは「僧侶も葬儀会社の仕事も、死に直面する重い仕事だから」という。堺自由都市文学賞は今回で最後。「何が何でも取りたかった賞。間に合って幸運です」。6作目で栄冠をつかんだ。(大阪社会部 阿部健)(2010年7月29日 読売新聞)

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2010年7月29日 (木)

村上龍さんの「歌うクジラ」出版社通さず電子配信

 村上龍さんの最新長編小説「歌うクジラ」が、紙の書籍に先駆けて、アップルの新端末「iPad」向けの電子書籍として公開されている。価格は1500円。
 電子版は、出版社を通さずに、コンテンツの企画制作を手がけるグリオ(東京都世田谷区)が制作。全632ページのうち、十数カ所で、音楽家の坂本龍一さんが制作したオリジナル楽曲が聞ける。
 「歌うクジラ」は平成18年3月から今年3月まで月刊文芸誌「群像」(講談社)に連載された。紙の書籍は講談社から出版される予定。
 電子版の公開にあたり、村上龍さんは「100年後の世界を描いた未来小説であり、具体的な未来のアイテムやモチーフがちりばめられている。(産経ニュース10.7.27)

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2010年7月28日 (水)

同人誌「胡壺・KOKO」第9号(福岡市)

 全体に雑誌としてバラエティに富んで楽しめる。
【「渓と釣りを巡る短編・峠越え・夫婦ヤマセミ」桑村勝士】
 これは、主人公が渓流と山であると読んだ。「この風景を見よ」であるから、人間は小説的に描かれていない。しかし、作者がなぜこの風景を描くかという視点で見ると、自然に生命感を感じる作者の趣味的な精神が読める。

【「顔」井本元義】
 70歳の老人が、衰えてなお人間として五感を追求する話。特に牡丹の華に、萌えとエロスを感じる。凝った表現が成功している。メッセージは、この「美意識を知れ」である。表現はそれだけで良いと思うのだが、心配性なのかどうか、補追がある。

 【「小倉まで」ひわきゆりこ】と【「崖くずれ」納富泰子】については、7月の「文芸同人誌案内掲示板」に一部記したが、それは知己の同人誌意識のものであった。
 作品紹介として述べると、「小倉まで」と「崖くずれ」には、現代社会に生きることの表現としての似た意識と表現法の違いが比較できるのが、読みどころであろう。
 「小倉まで」には、孤独な生活を送る高齢者の叔母の精神的な荒廃と、社会的な異端者に出会うことで、50代の主人公が感じる不安。間もなくやってくるのであろう、自分の社会的な個人としての無力感、苛立ちが感じられる。主人公は、変調する社会を動かそうとするのか、または個人的な自己存在の心の処理として、何かを持ちうるのかの問題提起をしている。
 ところが「崖くずれ」は、高齢者の妻の個人的な存在にスポットをあて、社会的な背景には特に触れない。しかし、このような設定は明らかに現在の日本社会を反映しているのだが。作者は、ひたすらにその現実を見つめる。まさに、小説の原理「この人を見よ」の世界である。そうしてその歪んだ現実を現実として見つめるなかにある美意識が働く。文芸的な手法に優れた手腕が見られるが、現代版ボードレールの「悪の華」のような系列で発想に新味はないところがある。もっとも芸術に新味が必需であるとは限らないが。ヘンリー・ミラーは、自分はこれまであったものばかりを書いてるだけだ、と言っている。
。(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

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高木敦史さんのライトノベル、無料公開 角川書店

 角川書店は8月1日に発売される作家、高木敦史さんのライトノベル(イラスト付き娯楽小説)「“菜々子さん”の戯曲(シナリオ)Nの悲劇と縛られた僕」(角川スニーカー文庫)の全文を、ウェブ上で無料公開した。同社によると、発売前のライトノベルが無料公開されるのは初めて。作品は、同社が主催するライトノベルの新人賞「第13回角川学園小説大賞」優秀賞を受賞。

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2010年7月27日 (火)

活字文芸誌「Zowv(ゾヲヴ)」22号(東京)

 本誌は日本作家クラブ会員で新聞連載をしている人や写真家などが、商業的には求められない? ジャンルのものを執筆しているようだ。同人誌のひとつの在り方ではある。
 雑誌に同封してあったメモによると、同人は15名ほどで、年4回発行しているという。「同人誌にとって大きな課題は、読者の確保であり、同人たちの成長には欠くことのできない要素と考えております」とある。(こういうのは助かる。金のかかった立派なつくりの雑誌で同人誌というのがないのもあるので。新興宗教の雑誌じゃないだろうな? などとしばらく置いておいたりする)。
【「夢見るハツコのパラダイス(中学生―意識の思想と意識の別れ道編)」金子佳世】
 在日朝鮮人の2世か3世のハツコの体験。朝鮮人学校に入学し、複雑な様相に戸惑う。困惑する状況が新鮮に読める。普遍的な人間性の側面を中心に描いてあるので、国家と国家の折り重なった間で生活する奇妙な感覚が伝わってくる。一番の読み物。日本政府も手を貸した北朝鮮への帰還については、国に騙されたか、という疑問も、国は人を騙す意志ってどこからくるのか、と考えるとややこしい。騙す気があったと、誰が言えば国が騙した証拠になるのか。ややこしく、わからなくなる話である。また公安警察の情報収集もチラッと出てくる。インパクトがある。
ーーこの作品には関係ないが、拉致を早いうちに阻止しておけば、犠牲者はもっと少なかったろうに。国は国民を守らないと、割り切ればあきらめもつく。メディアは金賢姫の来日に、トンチンカンな報道をしている。自民党は、情報収集が税金のムダ使いだとーー。自分の政権の時に国民を守らなかったのにね。《参照サイト:「Zowv」
。(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

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2010年7月26日 (月)

【文芸時評】8月号 早稲田大学教授・石原千秋

「同窓会小説」に複雑な思い (1/2ページ)(産経ニュース10.7.25)
 今月は、少しばかり複雑な気持ちで2編の小説を取り上げたい。以前僕はこの欄で、「同人誌小説」というジャンルがあるのではないかとやや皮肉混じりに書いた。同人誌の小説には、ある種のパターンがはっきりあったからである。その1つが、同窓会を契機にかつての思い人と淡い関係が続くもの。そこには初恋への強い思い入れがある。先に「複雑な気持ちで」と書いたのは、プロの小説家であればそういうアマチュアがよく使う設定を乗り越えていなければならないと思ったからである。
 綿矢りさ「勝手にふるえてろ」(文學界)は、26歳で処女のOL江藤良香が、友人の名前を騙(かた)って中学時代の同窓会を開いてしまう話。彼女には中学時代から密(ひそ)かに思っていた人がいた。彼を「イチ(1)」と呼んでいる。一方、江藤良香には交際を求める同僚がいる。江藤良香は彼を「ニ(2)」と呼んでいる(正確には、心の中でそう呼んでいる)。江藤良香は「イチ」に思いをそれとなく告げるが、はかばかしい反応はない。そうこうしているうちに、江藤良香は「ニ」を受け入れる気持ちになっていったというお話。最後になって「ニ」の名前が、霧島と書かれる。「さあ私は、愛してもいない人を愛することができるのか?」。これが江藤良香の気持ちの整理のしかたである。
【文芸時評】8月号 早稲田大学教授・石原千秋「同窓会小説」に複雑な思い

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2010年7月25日 (日)

「法政文芸」6号(東京)だんだん良くなる

 前号の5号では、「途上の幸福感」という印象を記した記憶があるが、6号は特集「平成のライフスタイル」などがある。その中に面白い面白さと、つまらない面白さのある寄稿があり、そのほかのものも「だんだんよくなる法華の太鼓でなく、法政文芸だな」と、感じた。
 ものすごく時代を映しているというか、怪我を恐れず空気を読んでいるから面白く感じるような気がする。
 平成のライフスタルの佐伯一麦『「私」が一番の謎』で学生が3人インタビューをしているが、普通の文芸雑誌にない質問で、作家がそれに丁寧に応えているのが大変面白い。
 高木美希「祈(ね)ぎごと」は、出版が法政大学国文学会という、伝統を背負っていることを如実にあらわす古文を現代語に練り直した作風。自分がマルクス経済の出だから思うのかもしれないが、日本語は美しいと感じさせ新鮮。陶工のような捏ねる腕力と努力を感じさせる。根気だけでもこれは才能ではないか。
 各教授のゼミの優秀作もそれぞれ才気のあるものが選ばれている。それぞれの学生たちは、これからどの方向いくのだろう、と興味が湧く。
 文学のインディーズでは、全国でミニコミを扱う書店の一覧名簿と「ガケ書房」(京都)・トンカ書店(神戸)や東京の代表的な扱い書店のリストがある。さらに東京・蒲田で開催の「文学フリマ」の紹介など。
 ところで、インディーズとメジャーという分類だが、文学ってメジャーがあるのかなという思いも浮かぶ。村上春樹のようなもの文学であるかどうかの問題ではあるけれど。

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2010年7月24日 (土)

第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞に佐宮、西村氏

 第17回小学館ノンフィクション大賞の選考が23日行われ、佐宮圭さん(46)の「鶴田錦史伝」と西村章さん(46)の「最後の王者」の2作が優秀賞に決まった。大賞は該当作がなかった。賞金は各100万円。

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文芸同人誌のテレビ登場について誤報をおわびします。

7月11日の本欄でつぎのような情報を記しました。
テレビ朝日で捜査一課第九係というドラマを製作しているらしい。ドラマの中で25年前の同人雑誌を使いたいので「砂」誌を、貸して貰いたいのです、という電話が文芸同人誌「砂」の連絡担当の牧野氏のところに来た。牧野氏が本棚をさがしたら35号と36号があった。そこで、助監督さんに電話。助監督さんが受け取りにきたので、手渡したという。放映日は10チャンネル7月21日と助監督が語ったようだ。ドラマの小道具に25年前の同人雑誌の現物を使用したがるとは、ずいぶん凝ったつくりである。
文芸同人誌案内掲示版」のひわきさんにまで伝播していただいたのですが、7月21日にはその話ではありませんでした。その後、同サイトにsaekiさんの書き込みをよませていただき、どうも14日にそれらしき放送があったらしいですね。
 とにかくお騒せして申しわけありません。みなさまにはお詫びします。
 その後、「砂」の連絡係牧野氏にその件問い合わせたところ、次のような連絡がありました。後ほど14日にあったようだと連絡するつもりです。
「伊藤様
 私も三回もビデオに入れたのを、見たけど、砂も同人雑誌のことも一切なかった。いったいどういう訳か知りたいがクレームを云うのはやめました。結局最初のシナリオを破棄したものと思います。ドラマ自体つまらないものでした。あんなに係長を無視したことも全然、ありえないことなので、漫画以下ですね。次からはこの手の話には一切乗らないことにします。期待を持たせてすみませんでした。なお砂誌は礼状つきにて返送されてきています。だけど一課だと3係から10係までが普通強盗殺人事件を扱うが、だいたい5班くらいあって1班に7名がおります。係長以下6名が二人一組で各所轄にいきます。」

 それにしても、あまたある同人誌のなかで、「砂」(現在113号を発行中のはず)が、小道具に選ばれたのか不思議です。
「砂」は文学賞を狙う同人誌ではない。昔話になるが、発行してまもなく、会員が雑誌「文学界」か「新潮」の新人賞を受賞し、会を退会。それから、ある会員の難解な小説が掲載されるといきなり「群像」に転載され、まもなく作者が退会。さらに、ある会員がディズニーランドに関するドキュメント的小説を書くと、週刊新潮がそれを転載、電車中吊り広告のトップ記事になりました。また別の会員が三島由紀夫との交流を書いたところ、ちょうどいま東京副知事の作家から、資料に見せて欲しいという連絡が入るなど、不思議な経歴を持つ同人誌です。ほかの同人誌から「どうして、そのように注目されているのか。コツを教えて」という質問を手紙で受けたこともある。うすうす感じるものはありますが、それはまた別の機会に。

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2010年7月23日 (金)

【文芸月評】待田晋哉(7月20日 読売新聞)魂の救済 邪を超えて

自己の罪に向き合う選択
《対象作品》中村文則氏(32)書き下ろし長編『悪と仮面のルール』(講談社)/絲山秋子氏(43)「末裔(まつえい)」(群像、2009年9月号~)/雨宮処凛(あまみやかりん)氏(35)「ユニオン・キリギリス」(すばる、2009年8月号~)/綿矢りさ氏(26)「勝手にふるえてろ」(文学界)/長島有里枝氏(37)「スーパーヒロイン」(群像)/藤代泉氏(28)「手のひらに微熱」(文芸)。

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2010年7月21日 (水)

第143回直木賞の林真理子委員選評

発表前ツイッターに情報/文学賞にもデジタルの波/候補作を電子書籍化
 第143回直木賞は15日、中島京子さんの『小さいおうち』に決まった。選考委員在任中の4月に亡くなった井上ひさしさんへの献杯で始まった選考会は、他2委員の退任もあって7人での密度の高い議論となったが、その一方で、発表前にツイッターで受賞情報が出回るなど、伝統ある賞を巡るデジタル時代の環境変化を印象づけた。
 選考会後、記者会見した林真理子委員は受賞作を、「戦争が始まっても豊かな文化を持っていた山の手の中産階級の家庭が、リアル」と講評。当時の資料の作中への取り込み方も、「なめらかに文章の中に入っていた」と評価した。受賞を最後まで競った道尾秀介さん『光媒の花』については、「(4度連続の候補で)1作ごとに力をつけてきたが、この作品はもう一つ魅力に欠けた」という。
 他の候補作では、姫野カオルコさんの『リアル・シンデレラ』は「破綻(はたん)した部分がある」という声が上がる一方で、「『その破天荒さこそが姫野さんの魅力』と強く推す意見もあって賛否両論」。本屋大賞受賞作の冲方丁(うぶかたとう)さん『天地明察』は、「才能のある新人」との評価で一致したが、「もう1作見てみたい」との結論に。
 また、芥川賞・直木賞の受賞作が、15日夜、発表前に両賞を運営する文芸春秋のホームページに掲載される手違いがあった。主催の日本文学振興会によると、受賞作決定後、候補全員に電話連絡してから、記者会見場で発表する手はずだったが、その前にツイッターで情報が飛び交い、「担当者がプレッシャーに負けアップしてしまった」という。
 同会では、今後、発表まで十数分かかる時間を短縮する方針だが、主催者側以外の関係者が、候補から直接得た情報をツイッターに流すことまでは規制できないという。

 このほか、冲方さんが都内で開いた異例の「大・待ち会」にはテレビカメラ10台、出版、映像関係者ら約150人が詰めかけて結果を待ち、光文社は、姫野さんの候補作の電子書籍版を15日まで期間限定発売。候補になること自体をプロモーションに結びつける傾向も強まった。(佐藤憲一、村田雅幸)(2010年7月20日 読売新聞)

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2010年7月20日 (火)

同人誌評「三田文學」第89巻・夏季号(2010.08.01発行)

対談「新 同人雑誌評」勝又浩氏・伊藤氏貴氏
今号で取り上げられた作品
堺恵利「水槽」(「森時計」8号、神戸市)、岩代明子「水を買いに行く」(「ignea」2号、東大阪市)、酒見優里「恋人はブッダ」(「清泉文苑」27号、東京都)、一藁英一「くらげの酢の物」(「VIKING」708号、和歌山県伊都郡)、難波田節子「郭公の雛」(「季刊遠近」39号、東京都)、野坂喜美「はんにゃしんぎょう」(「米子文学」57号、米子市)、蒲生一三「絆」(「文芸中部」83号、東海市)、磯貝治良「置き忘れたもの」(「架橋」29号、愛知県清須市)、藤原惠一「光のケーン」(「文芸思潮」33号、東京都)、塚越淑行「女とアボカド」(「まくた」267号、横浜市)、山岸久「恭一とダックスフント」(「山音文学」116号、北海道)、荒井登喜子「死の淵」(「文学街」271号、東京都)、江時久「赤城山」(「槐」27号、千葉県佐倉市)、浅丘邦夫「うもんさと、なぎさと」(「文学横浜」40号、横須賀市)、青柳隼人「シャンハイに降る雪」(「北狄」350号、青森市)、高橋陽子「むすびたいのに」(「せる」83号、東大阪市)、岡田四月「田々楽々」(「銀座線」15号、東京都)、藤保君子「小窓から眺める空」(「姫路文学」122号、姫路市)、大塚高誉「鈍色の街角」(「播火」74号、姫路市)、神盛敬一「オリオンの子」(「飢餓祭」33号、奈良市)
ベスト3
勝又氏:堺恵利「水槽」(「森時計」)、塚越淑行「女とアボカド」(「まくた」)、難波田節子「郭公の雛」(「季刊遠近」)
伊藤氏:藤原惠一「光のケーン」(「文芸思潮」)、塚越淑行「女とアボカド」(「まくた」)、難波田節子「郭公の雛」(「季刊遠近」)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

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2010年7月18日 (日)

著者メッセージ: 多和田葉子さん『尼僧とキューピッドの弓』

 次の問いのうち、あなたの関心のあるものにマルをつけてください。(講談社『BOOK倶楽部メール』2010年7月15日号)
(1)一人称で小説を書くとどんな危険なことが起こりうるか
(2)修道院の尼僧たちはどんな恋愛観をもっているか
(3)英語から入った外来語(コップとかテーブルとか)を全く使わないで
   日本語で小説を書くことができるか
(4)恋愛は一種の演劇なのか、それとも「運命」なのか
(5)弓道はドイツの哲学者の関心の的になりうるか
(6)古い建築物が歴史を記憶するというのは具体的にどういうことなのか
(7)恋愛というはっきりした形をとらない情念はどう燃えるか
(8)北京オリンピックはオリエンタリズムをどう復活させてしまったか
(9)人はなぜ渾名をつけるのか
(10)年取れば取るほど若返るとはどういうことなのか
(11)孤独を意識的に求めると孤独でなくなることはあるのか
(12)小説を読む楽しみはどこにあるのか

 ひとつでもマルをつけた人は是非この本を読んでください。
                           (多和田葉子)

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2010年7月17日 (土)

[日本赤軍]重信被告の懲役20年がほぼ決まる 最高裁が上告棄却

(2010年07月16日 / 提供:毎日新聞)
 オランダ・ハーグの仏大使館占拠事件(ハーグ事件、74年)で殺人未遂罪などに問われた元日本赤軍最高幹部、重信房子被告(64)の上告審で、最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は15日付で被告側の上告を棄却する決定を出した。懲役20年とした1、2審判決が確定する。

 弁護人によると、重信被告は昨年2月に大腸がんの摘出手術を受け、現在も治療を受けている。16日に東京拘置所で接見した際は、治療中であることを感じさせない様子で、決定に抗議して早期釈放を求め、「元気にメンバーや友人たちと再会し、アラブに残した宿題をしたい」と話していたという。

 1、2審判決によると、重信被告は74年、日本赤軍メンバー3人と共謀し仏捜査当局に身柄を拘束された別のメンバーの釈放を求めて仏大使館を占拠、拳銃を発射し警察官2人に重傷を負わせた(殺人未遂、逮捕監禁罪)。

 また同年、メンバーを他人名義で出国させるため、偽造申請書で旅券を取得。97~00年には自らが他人を装って旅券を取得し、関西国際空港から16回の出入国を繰り返した(有印私文書偽造・同行使、旅券不実記載罪、旅券法違反)。

 71年に出国した重信被告を中心にレバノンで結成された日本赤軍は、マレーシアの米大使館を武装占拠したクアラルンプール事件(75年)、インド上空で日航機を乗っ取ったダッカ事件(77年)などを起こした。

 ハーグ事件で国際手配された重信被告は00年、潜伏先の大阪府高槻市内で逮捕され、起訴後の01年に日本赤軍解散を表明した。裁判ではハーグ事件への関与を否定し無罪を主張したが、1、2審は実行犯との共謀関係を認定した。【伊藤一郎】
   ☆
 今年の年賀状に、年内に判決が確定しそうです、ということが書いてあった。弁護士にそれは何時ごろ決まるのかと問い合わせたところ、これは裁判所が一方的に通達することなので、いつかはわからないという話であった。 重信氏は1965年に、東京・日本橋のカルピスに勤め、夜に明治大学に通っていた。最近、重信房子さんを支える会の「さわさわ」にその当時のことを記している。よく覚えているものだ。その後、駿台文芸とかで文学活動をしていたのが、当時の全共闘に巻き込まれたようだ。
 自分は、1963年から67年までアルバイトで転々としながら法政大学の夜間に通った。当時はどの大学でもそうだろうが、校門付近では、民青同、中核派、革マル派などが、アジビラをもって、新入生を自派に勧誘していた。ちょっと運動に疑問をだせば「てめは、デモにいったのか」とデモ参加信仰を説く。同期の友人の多くが誘われて行った。「何のために学問をしにきたのだ、一緒に卒業しようよ」といっても、耳を貸さない。なぐられそうになる。教室に行くと、教授の来る前に黒板の前の教壇で、何々派が反体制の演説をする、「いいかげんにしろ、俺達の授業をじまするな」「いいじゃないか」とまず小競り合いが始まるといった調子の日々だった。
 当時の騒動で、身体を損傷して一生を過ごすことになった人たちはどれほどいるであろか。表にでることがないが。それがいろいろあって、今のニヒリズム的なムードの世情になるとは思ってもみなかった。

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芥川賞の赤染さん「アンネ」モチーフ、「『エースをねらえ!』も意識」

第143回芥川賞を受賞した赤染晶子さん 受賞作のモチーフとなっているのは「アンネの日記」だ。作品の構想が生まれたのは、アンネ・フランク生誕80年の昨年。「日本人の『アンネの日記』への読み方は、あまりにもロマンチックすぎるのではないか」と疑問を抱いたのがきっかけだったという。「言葉」や「アイデンティティー」といったテーマをめぐり、さまざまな仕掛けが施された作品だ。(産経ニュース10.7.15磨井慎吾)
 作品の舞台は、赤染さんの母校である京都外国語大がモデル。スピーチコンテストのために「アンネの日記」の暗唱に打ち込む“乙女”たちの日常を、戯画化して描いている。「『エースをねらえ!』など、スポーツ根性物の少女漫画を意識した」とも。日本人の女の子の世界をあえて作り物めかすことで、「アンネの日記」のリアリティーを際立たせるためだ。
 執筆に当たっては、オランダ国立戦時資料研究所から研究者向けの資料を取り寄せ、オランダ語版、ドイツ語版は常に手元に置いて、読み返した。作中での原文引用はすべて赤染さん自身の訳(やく)による。
 当初は文学研究者を志していた。専業作家になるきっかけを提供してくれたのは「故郷・京都」だったという。
 「役所の窓口で接した京都の人たちがすごく面白くて、小説にしてみたらどうかと思ったんですよ」。だから、これまでの作品はすべて京都が舞台。「京都人はイケズ(意地悪)といわれるけど、私はそう感じない。ユーモアがあって、すごく温かい」。これからも、京都人の小説を書いていくつもりだ。
 「京都以外では生きていけない。ずっと京都にいたい」とまで言い切る故郷愛。作品の秘密はこんなところにもあるようだ。(磨井慎吾)

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2010年7月15日 (木)

第143回芥川賞に赤染晶子さん、直木賞は中島京子さん

 第143回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日夜、東京・築地の新喜楽で行われ、芥川賞に赤染晶子(あきこ)さんの「乙女の密告」(新潮6月号)、直木賞に中島京子さんの「小さいおうち」(文芸春秋)が決まった。

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同人誌時評(6月)「図書新聞」(2010年7月10日)たかとう匡子氏

《対象作品》「火の鳥」第23号(火の鳥社)より平林敏彦・長谷川龍生・三浦雅士のフリートーキング、「名古屋文学」第27号(名古屋文学の会)より佐山広平「眠れる美女私論-エロチシズム幻想」、「十三日会」第25号(十三日会)より中川敏「立原道造の彷徨(六)-立原道造と伊東静雄」、「すとろんぼ」第8号より松原新一「佐田稲子ノート(5)」、「孤愁」第7号より豊田一郎「イルミナシオン」、「午前」第87号(午前同人会)より明石善之助「美しかりし兜屋小町」、「雑記囃子」第10号(グループJ-MZP)より稲葉祥子「あるいは、妹」、「笛」第252号(笛の会)より井崎外枝子「『新編濱口國雄詩集』をめぐって-濱口詩の真髄を、後世に伝えたい」、「Messier」第35号。
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

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2010年7月13日 (火)

小説の盗用訴訟人の控訴を棄却。「弁護士のくず」訴訟 

小学館のビッグコミックオリジナルに連載中の漫画「弁護士のくず」の四話分について、内田雅敏弁護士が自身の小説『懲戒除名』からの盗用として、作者の井浦秀夫氏と発行元の小学館を相手取り、500万円の損害賠償などを求めた著作権等侵害訴訟の控訴審で知財高裁は6月29日、請求を退けた第一審を支持し、内田弁護士の控訴を棄却した。
 飯村敏明裁判長は「漫画にはエピソードやアイデアで共通点はあるが、表現上の特徴で共通する部分はなく、小説の本質を感じ取れるものではない」として、「著作権・著作者人格権の侵害などにはあたらない」との判決を下した。
 著作権は作品の〈創作的表現〉を守るもので、創作的表現を真似しない限り、先行する文献から実在の事件を学んで作品に利用することは許される。小学館では「一審に続いて知財高裁でも当方の主張が認められたことは、高く評価する。先行する文献から実在の事件を学んで、事件の骨格を作品に利用することは侵害にあたらないという意味ある判決」とコメントしている。(新文化)

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2010年7月12日 (月)

文芸同人誌評「週刊読書人」(2010年7月2日付)白川正芳氏

《対象作品》小名木綱夫『羽田 蒲田物語』(私家版 現代短歌評論社発行)、水木怜「エンゼルベイビイ」(「旅かばん」創刊号)、尾内達也「欧州俳句の試み」(「COAL SACK 石炭袋」66号)
畑島剛「山の音 奥山温泉」(「佐賀文学」27号)、田中純司「夕陽録断簡」(「青稲」84号)、興津喜四郎「増井林太郎翁昆虫資料」(「丁卯」27号)、嶋本茂男「ありがとう 生きて歩いて山登り」(「ベルク」109号)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

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2010年7月11日 (日)

ドラマの小道具に25年前の同人雑誌の現物が登場するのか。

 テレビ朝日で捜査一課第九係というドラマを製作しているらしい。ドラマの中で25年前の同人雑誌を使いたいので「砂」誌を、貸して貰いたいのです、という電話が文芸同人誌「砂」の連絡担当の牧野氏のところに来た。牧野氏が本棚をさがしたら35号と36号があった。そこで、助監督さんに電話。助監督さんが受け取りにきたので、手渡したという。放映日は10チャンネル7月21日と助監督が語ったようだ。ドラマの小道具に25年前の同人雑誌の現物を使用したがるとは、ずいぶん凝ったつくりである。

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2010年7月10日 (土)

同人誌評「毎日新聞」西日本地域版2010年6月21日(月)朝刊

《対象作品》「ことばの森から」小説編<4~6月>松下博文氏筆・タイトル「やさしさの文学」
明石善之助「美しかりし兜屋小町」(「午前」87号)、神宮吉昌「美佐代」(「季刊午前」42号)、野島京吾「さくら」(「火山地帯」161号)、田井英祐「与吉の話」(「詩と眞実」731号)、後藤みな子「樹滴」(「すとろんぼり」8号)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

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2010年7月 9日 (金)

秋篠宮ご夫妻の開会式テープカットで第13回「東京国際ブックフェア」が開幕=東京

  世界30カ国の出版社・書籍と商談機会が得られる第17回「東京国際ブックフェア」が8日から11日まで、東京ビックサイトで開催されている。8日の開会式には東京国際ブックフェア名誉総裁の秋篠宮ご夫妻を中心に、外国からの参加団体や主催団体関連の代表者たちによるテープカットが行われた。(写真参照: 「暮らしのノートPJ・ITO」 )
 
 今回は、過去最大となる1,000社が出展、話題の電子書籍や新しいスタイルの書籍など、時代に対応した本のモデルを展示販売している。
 各種セミナーが大人気で、8日の佐野眞一氏の基調講演『グーテンベルクの時代は終わったのか』には、1,500人の希望者があり、講演会場の別室にモニターを設けて、聴講するほどであったという。セミナー参加者数は過去最高の1万人を越えるであろうという。
 佐野氏は電子書籍について、メディアや関係者が騒ぎすぎで、影響があるものの底に流れる人間の欲求、負荷をもって読書するという姿勢をわすれてはならない、と述べた。その寓意として、新美南吉の童話「おじんさんのランプ」を例にあげた。
 これは灯りのない農村に、字の読めない男がいた。あるときに油を灯すランプの存在を知る。男はランプで夜も本が読めるとわかり、ランプを売って生活する。しかし、やがて村に電気がきてランプが売れなくなる。
 男は電気を通じた村長が憎らしくなり、村長の家を燃やしてしまおうと思う。しかし、人々が電気の下で本や新聞を読んでいるのを見て、人間は夜でも本や新聞を読みたいのだ、そのために電燈はいいものだと知る。ランプがうれなくなったのは時代の流れで仕方がないと、持っているランプを森にすべて吊るして去る、という物語だそうである。
 今後の講演予定は10日に東京大学大学院教授・姜尚中氏の『 読書の力「自己内対話」が開く世界 』、11日に作家・浅田次郎氏『読むこと書くこと生きること』など、人気作家の登場の前評判が高い。

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2010年7月 8日 (木)

葵ゆうさんの小説、自主回収 雨川恵さんの小説と表現が酷似

 角川書店は5日、葵ゆうさんの小説「ユヴェール学園諜報科」(角川ビーンズ文庫)シリーズの2作に、ほかの作品からの表現の流用があったとして絶版、自主回収したと発表した。(2010.7.5 産経ニュース)
 同社によると、絶版になったのは同シリーズの「一限目は主従契約」「生徒会長と二限目を」の2作。同文庫から出ている雨川恵さんの小説と表現が酷似していることがインターネットの掲示板で話題となっていた。8月1日発売予定だったシリーズ最終巻の刊行も中止した。
 葵さんは同社のホームページで「作家としてやってはいけない行為で、深く反省している」と謝罪している。

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2010年7月 7日 (水)

雑誌「考える人」編集長に河野通和氏

河野通和氏は「婦人公論」や「中央公論」の編集長や取締役雑誌編集局長などを歴任。その後、日本ビジネスプレスの特別編集顧問を務めていた河野氏が新潮社の役員待遇、雑誌「考える人」編集長に就いた。

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2010年7月 6日 (火)

自著を語る・勝目梓氏「叩かれる父」,(光文社)難多き定年後

 人生八十年の高齢化社会だが、現代版隠居生活は数々の難問を抱えている。終戦後の貧乏暮らしから、高校を出てひたすら勤勉に働き、気がつくとダサいだの加齢臭だのと敬遠され、濡れ落ち葉、粗大ゴミ、定年離婚と寒々とした時代に生きるお父さんへの応援歌として書いたと語る。
かつめ・あずさ=1932年、東京生まれ。高校中退後、雑多な職業に就く。74年に「寝台の方舟」で小説現代新人賞を受賞。官能バイオレンス分野に進む。近著「カレンダーのない日」「老醜の記」とも文芸春秋。(毎日新聞6月29日夕刊)

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2010年7月 5日 (月)

文芸時評(東京新聞6月30日)=沼野充義氏

過去ときちんと向きあう井上作品/堂垣園江「ライナスの毛布」死と死体の不気味さ/青来有一「余命零日」浸み出す歴史の重み。
《対象作品》荻世いをら「彼女のカロート」(すばる)/井上ゆり手記・井上ひさし「絶筆ノート」(文芸春秋)/堂垣園江「ライナスの毛布」(すばる)/石原慎太郎「夢のつづき」(文学界)/青来有一「余命零日」(同)/村田喜代子・皆川博子・日和聡子・特集「101年目の遠野物語」(新潮)。

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2010年7月 4日 (日)

同人誌「相模文芸」第20号(相模原市)

 10周年記念特集で、カラー写真入りの300頁にわたる豪華版である。相模原市は人口72万人、全国で19番目の政令指定都市になったそうである。写真家の江成常夫氏がパラオの海に今も沈む日本軍のゼロ戦闘機の残骸写真と一文を掲載している。
【「含笑些話異聞(三)老樟(くす)の香」中村浩巳】
 退職の高齢者夫妻の生活を、ユーモラスな筆使いで、しかもリアルで幻想的に描く。自在な表現を駆使して面白がらせる。逞しさを感じさせて、ほんとうに面白かった。

【「鱗子」白銀律子】
 ある恋愛の物語を、短く詩情をもって語るが、ほとんど全体が詩。感覚が澄んでいてシャープ。魅力的な作風をもつ詩人である。

【「私的な小説作法と意見」外狩雅巳】
 明解で力強い描写力のある文体を発揮し、伝達力を重視する意味では、現代的な作風をもつ作者。東京・中野の新日本文学会の学校、池袋・大塚の民主主義文学、三田の中央学働学院など、労働者文学で学んだ経過と創作に関する持論が述べられている。自分から見ると、外狩氏の作風は、文学的な表現には考慮に入れず、素朴で粗削りの良さを持つように読めた。この論で、その理由がわかる。
 また、体験から生まれる細部の面白さがあり、著作「この路地抜けられます」が書店で300部だか売れたというのも理解できる。小説の要素である「この人を見よ」と「この現場を見よ」という二つのコンセプトがあるので、週刊誌的な面白さも含むのである。
 自分も新日本文学会の中野には通った。その頃は詩を書いていたので、長谷川竜生、針生一郎、菅原克己などが講師にものを聴講したものだ。
 その他の作品も表現が明解な感じがして、雑誌として面白い。

(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)
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2010年7月 3日 (土)

文芸時評(毎日新聞6月29日)=田中和生氏

「ワタシ」を突き放し楽しい/現代における希望とは
《対象作品》大道珠貴「身軽で身重」(文学界)/山城むつみ・評論「カラマーゾフのこどもたち」(群像)/野田秀樹・戯曲「ザ・キャラクター」(新潮)/伊藤計劃(09年没)「虐殺機関」「ハーモニー」(早川書房)/藤野眞功「バタス―刑務所の掟」(講談社)。

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2010年7月 2日 (金)

第143回芥川・直木賞の候補に計12作

 第143回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の候補作が決まった。
 芥川賞は、赤染晶子(あきこ)「乙女の密告」(新潮6月号)、鹿島田真希「その暁のぬるさ」(すばる4月号)、柴崎友香(ともか)「ハルツームにわたしはいない」(新潮6月号)、シリン・ネザマフィ「拍動」(文学界6月号)、広小路尚祈(ひろこうじ・なおき)「うちに帰ろう」(文学界4月号)、穂田川洋山(ほたかわ・ようさん)「自由高さH」(文学界6月号)の6作。
 直木賞は、乾ルカ「あの日にかえりたい」(実業之日本社)、冲方丁(うぶかた・とう)「天地明察」(角川書店)、中島京子「小さいおうち」(文芸春秋)、姫野カオルコ「リアル・シンデレラ」(光文社)、万城目学(まきめ・まなぶ)「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(筑摩書房)、道尾秀介「光媒(こうばい)の花」(集英社)の6作。 選考会は15日午後5時から、東京・築地の新喜楽で行われる。(2010年7月2日 読売新聞)

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西日本文学展望「西日本新聞」6月30日朝刊・長野秀樹氏

題「記憶」
池部正臣さん「六年兵はなみだした」(第七期「九州文学」10号、福岡県中間市)、田所喜美さん「二十七(イーシプチルバン)番」(「火山地帯」162号、鹿児島県鹿屋市)
杉山武子さん『矢山哲治と「こをろ」の時代』(続文堂出版)、「ARTing」第4号(福岡市)
林由香莉さん「秋空の忘れ物」(「九州文学」)、堀勇蔵さん「赤い夕日に照らされて」(同)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

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2010年7月 1日 (木)

三島賞授賞式で東氏「小説続ける」

 「何をやっても『何でこんなことやってるの?』と言われるのが僕の今までのキャリア。新しいことに挑戦している証拠だと思っている」。
 25日に開かれた第23回三島由紀夫賞の授賞式で、小説『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社)で受賞した批評家の東浩紀氏(39)=写真=が、小説家として書き続けていく決意を述べた。
 受賞のあいさつで、「批評家がなぜ小説を書くのか何度も聞かれたが、小説の中身について聞いてくれる人は少なかった。作品にとっては逆風だった」と語り、評論家デビュー以来、同じような反応を受けてきたと振り返った。「5年後、10年後に、あのとき東浩紀が批評から小説に足を踏み出したのは必然だった、と言われるような実績を作っていきたい」。スピーチの後は、花束を渡しにきた5歳の長女を抱きかかえ、相好を崩していた。(2010年6月29日 読売新聞)

○メモ=小説の創作方はほとんど大塚英志氏の理論に順じていると思わせるが、表現力は大塚氏に及ばないと思う。ただ、とにかく話題を呼んで、読んでもらって出版社に本を出させるコツを駆使している。そういうノウハウ力は現代的で参考になる。「クォンタム・ファミリー」は、読まなくても損はしていない。文壇的コミュニテイの活用がどこまで効果をもつのかの実験者か。

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