« 著者メッセージ:『雨心中』 唯川恵さん | トップページ | 著者メッセージ:『老猿』 藤田宜永さん »

2010年6月21日 (月)

<詩の紹介> 「青い母」   山本聖子

港は
そっと抱いている
旅立てなかった真昼の夢

海面下七メートルの
まだ幼い曲線をえがく水の宮
うす青い温塊を
川からの離岸流で酔わせないよう
霧をはらう笛で起こさないよう

 北西の寡黙をすこし
 南南東の情をすこし混ぜ

二十日月が満ちるのを待っている

わたしは
そんな港から海へ出た
   詩誌「まひる」 第6号より 2010年4月あきる野市・アサの会

<紹介者「詩人回廊」江素瑛>
 川からの離岸流で酔わせないよう/霧をはらう笛で起こさないよう/
とやさしい気持ちを込めた若い母の子守唄と祈りである。
胎内の記憶というか、羊水の記憶というか、自分を孕む若い母親の気持ちを、満月の出航を待つ胎児の心を、作者は表現しているのか。なぜか秘められた内なる悲しみが感じられる。 

|

« 著者メッセージ:『雨心中』 唯川恵さん | トップページ | 著者メッセージ:『老猿』 藤田宜永さん »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 著者メッセージ:『雨心中』 唯川恵さん | トップページ | 著者メッセージ:『老猿』 藤田宜永さん »