著者メッセージ:『雨心中』 唯川恵さん
この『雨心中』の第一章となる『降り暮らす』を書いた時、実は、長篇に しようとは考えていませんでした。
それなのに、どういうわけか主人公のことが頭から離れず、やがて私自身この先いったいどうなるのか、突き詰めていきたいと思い始めたのです。
主人公は幸福に向かおうとしているのか、それとも、絶望に向かおうとしているのか。書きながら、そのふたつのあまりの近さにため息をつき、同時に、もしかしたら主人公にとってそのふたつは同じなのかもしれない、とも考えました。
私はよく恋愛小説を書く小説家と言われていて、もちろんそれに異存はなく、また興味も尽きないのですが、今回の『雨心中』は、今までとは違った一冊になったのではないかと思っています。 (唯川恵)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2010年6月15日号)
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