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2010年6月17日 (木)

著者メッセージ:『悪貨』 島田雅彦さん

『悪貨』は、ニューヨークに滞在中の2009年1月から書き始めました。
 私は、リーマン・ショックから始まった金融恐慌を間近で見ながら、二十世紀の大恐慌のことを考えました。大恐慌は、一九三一年に景気の二番底を経験し、ハイパーインフレ、ブロック経済、そして全体主義の台頭、世界大戦へと二十世紀前半のカタストロフの引き金になった。
 恐慌は世界を根底から変える要因になる。それが自然発生的なものならば、天災であるが、意図的に引き起こされた事件であるならば、それは一種の戦争であり、革命です。
 また、ナチスドイツは大戦末期に大規模な金融テロを実行しました。イギリス・ポンドとアメリカ・ドルを大量に偽造しようとしていたのです。れは国家規模の経済戦争の最たる例だが、似たような国家的陰謀が現代においても、着々と進行しているのではないか? そして、今、世界は新たな貨幣システム、新たな通貨を必要としているのではないか?
 私は『悪貨』構想の最初の段階からそんな予感を漠然と抱いていました。それが、どのような小説となって結実したか、ぜひ確かめてみてください。(島田雅彦)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2010年6月15日号)

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