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2010年6月 3日 (木)

作品のネット公開。渡辺淳一さん、瀬戸内寂聴さんも

 作家の五木寛之さんが昨年末に出したベストセラー小説「親鸞」の上巻全文が先月12日から1か月間、インターネット(http://shin-ran.jp)で無料公開されている。パソコンでの“立ち読み”によって読者を書店に呼び戻そうとする動きが、人気作家の間でも広がっている。
 「親鸞」は上下巻で計65万部と版を重ねる。新刊の一部をネット公開する手法は昨年頃から増えているが、人気作の前半をそっくり無料公開した例はない。
 自ら提案したという五木氏は「一人でも多くの読者に読んでもらいたい。若い世代が書店に足を運んでくれるきっかけとなれば、これほど嬉(うれ)しいことはありません」と理由を述べる。
 長引く出版不況で書籍・雑誌の昨年の推定販売額は21年ぶりに2兆円を割り、全国の書店数も2000年の2万1000店強から6000店以上減った(アルメディア調べ)。出版事情に詳しいフリーライターの永江朗さんは「全国どこでも著作が並ぶ人気作家だけに、特に地方の書店減少を深刻に受け止めたのではないか」とみる。
 出版元である講談社の国兼秀二・文芸図書第二出版部長は「読者が本に触れるきっかけ作りという意味でプラスと判断した。少しでも読み始めてもらえば、ワクワクするエンターテインメントとして本を買ってもらえる自信がある」と話す。公開後1週間で約20万回閲覧され、書店での売り上げも上下巻ともに約2割伸びたという。今後、iPadでも電子書籍として販売する予定だ。
 渡辺淳一さんも4月末から約2週間、初期の短編をネット公開した。自選短編集(朝日文庫)のPRを兼ね、閲覧は3万回以上。集英社インターナショナルも同月、新刊の半分程度を公開する「無料立ち読み」を始めた。瀬戸内寂聴さんの近刊も近く公開する。
 ベストセラーを連発してきた大御所3氏だが、「新しい技術にも前向き。米国企業にのみ込まれる前に、日本の出版社主体の仕組みを作らなければ、という気持ちも強いのでは」と永江さん。出版状況が激変する中、人気作家も様々な模索を続けている。(多葉田聡)(2010年6月1日 読売新聞)

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