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2010年4月13日 (火)

大江健三郎賞受賞「掏摸」中村文則さん 作家生活も9年目

(産経ニュース2010.4.11)作家、中村文則さん 電話で知らせを受けたとき「エープリルフールかと思ってカレンダーを見た」という。小説『掏摸(スリ)』(河出書房新社)で第4回大江健三郎賞を受けた作家の中村文則さん(32)。平成17年の芥川賞以来の受賞に、「僕の人生は小説(を書くこと)で終わると決めていたが、その気持ちがより強くなった」と語る。
 東京で「裕福者」を狙うスリ師の主人公が、ある男との再会を通じて究極の「悪」に巻き込まれていく受賞作。娯楽性の高い物語展開の中に、都市生活者の「存在」をめぐる文学的問題を盛り込んだ意欲作として話題を集め、現在9刷と読者のすそ野を広げている。
 選考委員の大江健三郎氏は選評で、主人公はスリを通じて「裕福者」だけを他者として選別しており、それ以外の人間が「無化」されていることを指摘。「今日的な新しい視点を持ち込みうることに気付いた作家」と賛辞を贈った。
 中村さんは「デビュー以来、ずっと人間の関心の強弱や偏りを書いてきた」と振り返り、「デビュー前から尊敬してきた大江さんの鋭い選評を読めたことは作家として大きな喜び」と笑顔を見せる。
 大学生のときに大江氏の『個人的な体験』を読んで「(小説の)言葉が迫ってきて、自分の中に深くしみこんできた」という。「生きにくくてパンクしそうだった青年時代、大江さんの小説の言葉が必要だった」
 今年迎える。古典的で硬質な「純文学」作家として知られるが、「僕がデビューした時からすでに純文学は厳しい状況」と語る。
 「文学には大きな財産があり、その上に積み重ねていく新しさもあるはず。小説の魅力を総動員した作品を書いていく」(三品貴志)

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