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2010年3月 2日 (火)

<詩の紹介> 「時間について」 中西 衛

      「時間について」 中西 衛

あれはいつの日だったか 親しい友人に新茶を送った 店の主人は明日着きますよと言っていた ああそうですかと頷く さほど驚くことでもないと思った

関西から九州の果てまで 集積 運送 配達 これは理屈ではない実態 荷物はどこをどう どの道を通って終着までいくのか 考えたこともない 

当たり前のことが当たり前であるために 睡眠じかんをも惜しんで 真っ暗やみを走り続ける プロフエッショナルの悲しい技
             ☆
(紹介者・「詩人回廊」江素瑛)
 「当たり前のことが当たり前であるために睡眠じかんをも惜しんで 真っ暗やみを走り続ける」小さなお茶ひとつだけを相手に届くまで、いかなる人が昼夜とも言わず、仕事を取り組むのだが。
もとも日が出ると活動する、日が沈むと休むという、純粋な古き生活リズムがだんだんと破壊される今時。エジソンが電燈を発明してから、人の脳内時計が混乱し始める。多くの現代人は昼間に睡眠を取り、夜の暗やみに灯火煌々で働く。昼夜顛倒も当たり前のことで、生きるため昼も夜も睡眠を惜しむのだ。
荷物を受け取る人には魔法のようにも、または当たり前のような感覚にもなる。どこまで人間は自分で作った異常な環境に適応してゆくのか。ここに現代人の恐怖感と不安が読める。
<「国鉄詩人」250号より 2010年春 神奈川県厚木市 国鉄詩人連盟>

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