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2010年3月27日 (土)

<詩の紹介> 「重力に関する二編」山崎夏代

重力に関する二編      山崎夏代

(1)わたしが立っているのは 地球/それは 確かなことなのだろうか/憧憬 あるいは 妄想ではないか/自分が寄って立つと信じている場/そんなものがあるとすれば 幻想のなかにだけ//わたしと地球とのあいだには/思いも及ばないほどの はるかな 距離がある//わたしの足 靴下 靴 コンクリート/枯れ朽ちた草の根 乾いた土 それぞれは果てしない空間を持ち 地球は遠い 地球とわたしとの間の幾層もの宇宙//距離を 無数の微粒子が行き交い/ぶつかりあい/ふくれあがったり つぶれたり/あらたな粒子を生んだりしている//この険しいへだたりを/つなぐもの/重力/脳天から足の裏にいたるまで/すべて わたしというものを/一点に集めて 垂直に/地球へ その中心へ/向かわせる//わたしは ヤジロベエ だ/面積もない 目にも見えない/ただ一点に 己を架けて/均衡を保ちながら/あやうく地球に結ばれている。
(2)皮膚と皮膚は呼吸さえできないほどに/密着しているというのに/肌と肌の間を滲み出てきた汗が/あなたの体液か わたしのものか/わからぬほどなのに//この距離のはてしない遠さは なんだろう/空間を/言語感情の体系を異にする生命体を乗せて/無数の円盤が飛び交っている/あなたの重さが わたしに掛かっても/わたしの中心には届かない/わたしの重力と あなたの重力は/のけ反りあって/反発しあい//相反するかたへ遠のく/爆発を避けて 不毛を孕みながら//存在とは重力/ 重力とは愛だ と/あなたは言ったが//横たわる/非在と非在/重さの幻だけが/無限のかなたへと 拡散していく

<紹介者・詩人回廊・江素瑛>
「地球とわたしとの間の幾層もの宇宙」「あなたの重さが わたしに掛かっても/わたしの中心には届かない」夢想の中の現実を表現する。
 個体と個体、こころとこころ、愛の絆の手ごたえがあるのに、しかとつかめない。人と人の関係に距離のない相手は存在しないのか。定点に居なければ、無限大の距離さえ感じる。足底は地球表面に、同じ地心に引っ張られても、肌は肌に、触れる距離に居ても、「距離を 無数の微粒子が行き交い」、見える固体が熔けて液状になり、液体が蒸発して、気体になるまで求めあっても、心を求める微粒子が残る。微粒子同士の距離を無くすことはできないので、愛のあかしを芳醇な体液で、互いに潤し、混合させるのだろうか。詩誌 「流」32号より(2010年3月 川崎市 宮前詩の会)

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