<詩の紹介> 「夜半の雨」 竹内オリエ
夜半の雨 竹内オリエ
そう わたしがダイエットを始めて以来 一年あまりの月日が過ぎていた どんなにか細身に憧れていたものを 今ではさんざん後悔している 体重計の針はどんどん下り坂を示し ここで止めておけば良かったものを 歯止めがきかなくなったこの体 骨張った顔つきの鏡の中の自分 別人に見えて仕方がない
秋からはさんざん食べて 胃袋を大きく戻してきた 今度は上り坂で増えた体に歯止めをかける 何とまあ無駄なことばかりのわたし そんな時間と引き替えに 得た物はなんかしら 幸福は今のままが良い
夜半の雨を知らずに雨戸を開けた 久方ぶりの御湿りだったのだ 暖かで穏やかさを秘めた朝がきた
竹内オリエ詩集「春のあとさき」より(2010年3月 静岡浜松市 樹海社)
<紹介者「詩人回廊」江素瑛>
この時代の美人と思われる人はなぜか細身が多い、女性も男性も細身にあこがれる時代が延々と長引いている。
人間以外の動物はダイエットしない。満足な食事であれば、感謝する。ダイエットは餓死と等しい。
人間は謎めいた動物である。タレントは役造りのために、競技者は成績を上げるために、肥満患者は治療のために、ふところが貧乏のためにダイエットするか。普通の人間であるあなたはどっちなのですか?不平不満より「今のままが良い」とそこで、落ち着くことは難しい。人は何もしないでいることにどれだけ耐えられるか。人間の進歩とは何か?おだやかな朝が問いかけてくる。
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