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2010年1月19日 (火)

同人誌「相模文芸」19号(神奈川県)

 本誌はエネルギッシュな書き手の集まりで、ショートショートあり、ユーモアコントあり、評論ありで、総合文芸的な面白さを持っている。
【「四人目の男」濱村博三】
 ミステリー小説。ある婦人を仕事関係で訪ねてくる若者が相次いで、婦人の住む階から転落死する。警察では、事故死扱いをするが、刑事のひとりが、彼女に疑いをもち聞き込みをする。マンションの5階でエレベーターがないという話は、今風ではないが、オチもあって面白い。
【「裁きへの系譜」水郷流】
 少女殺害事件で、DNA鑑定の誤りや検察の人権無視の取調べで、容疑者はむりやり自白され、死刑判決を受けたが、最終的には最高裁で無罪になった足利事件の概要をたどったようなモデル小説。小説であるので、真犯人への言及などもあってもいいかと思ったが、市民の関心として記録するのは良いかもしれない。
【「まわり道」山中正剛】
 高齢になって病気になると、正しい診断をしてくれる病院になかなか出会うことができない。あちこち病院をまわされて、正しい治療を受けるまでをユーモラスに描く。若い頃から高齢者の病気を知っていても、いざ自分が高齢になって病気になると、高齢にならないと経験しないことなので、未知の分野。まごつくことが多い。共感をもって読んだ。
【「文豪の遺言」(5)木内是壽】
 作家の生涯をたどりながら、死に際の言葉を明らかにする。よく調べたもので、大変面白い。
【「北方水滸伝を読む」福島泰吉】
 中国の水滸伝を原作とする日本の水滸伝物語りを巡る話。これも面白い。
【「不況だ、笑って吹く飛ばせ!」出井勇】
 タイトルの通り、笑い話、駄洒落などを面白く書く。秀逸。才気がある。現役の落語家はこういうネタを提供すると使ってくれることがある。
【「切ったり切られたり」外狩雅巳】
 労働者文学的な、労働体験小説。筆力がある。作者は、「この路地抜けられます」(東京経済社)などの小説は、紀伊国屋書店などで、200部以上売れているそうである。私も読んで見たが、リアルな仕事体験や職場体験は、時代の情報があるので売れることが多い。ドキュメンタリー的な明確な文章がわかりやすく良いのであろう。昔の編集者は、短い文で仕事場の状況を巧く伝えるものや、4人~5人の同時会話、群集描写能力があるかとかで、作家的な手腕を評価したものだ。今でも事情は似たようなものがあるのではないか。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)
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連携サイト穂高健一ワールド

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