« 第142回直木賞に佐々木、白石両氏、芥川賞は該当作なし | トップページ | 第142回直木賞・佐々木さん、デビュー31年、還暦前の栄冠 »

2010年1月15日 (金)

第142回直木賞・白石さん「大嫌いな賞」の呪縛から解放

 直木賞を受賞した白石一文さん 「大嫌いな賞」。直木賞に決まった白石一文さんは、そう公言してきた。
 作家だった父・一郎さん(故人)が、直木賞を受けたのは、実に候補8度目でのことだった。それまで息子は、父が候補になると「これで食うや食わずの生活が変わる」と思い、父は落選するたび、団地の狭い一室に詰めかけた記者たちに頭を下げていたという。子供心に思った。「なんでパパが謝るんだろう」
 だが息子が選んだのも同じ棘(いばら)の道だった。きっかけは大学1年の時、一郎さんの小説を批判したこと。父は猛烈に怒った。「なら、お前も書いてみろ」。挑発された息子は、東京の下宿で作品を書き、故郷・福岡に送りつけた。すると驚くことに、父は絶賛。「それで僕は道を誤ってしまった」
 大学卒業後、出版社に入ってからも書き続けたが芽が出ず、デビューできたのは41歳。以来、人はどう生き、どう社会と対峙(たいじ)すべきかを考えさせる作品を発表しながら、一貫して小説の可能性を探ってきた。
 「僕が小説家になることに父は反対だった。でも結局は、僕も、父と同じようにこの道しかない」との思いを、いま改めてかみしめている。(文化部 村田雅幸)(10年1月14日 読売新聞)

|

« 第142回直木賞に佐々木、白石両氏、芥川賞は該当作なし | トップページ | 第142回直木賞・佐々木さん、デビュー31年、還暦前の栄冠 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 第142回直木賞に佐々木、白石両氏、芥川賞は該当作なし | トップページ | 第142回直木賞・佐々木さん、デビュー31年、還暦前の栄冠 »