同人誌「海」第二期第2号
このところ、優先したい用事が重なって、送られてくる同人誌に目をとおしていても、記事にする暇がなかった。たまった同人誌を整理していたら、そこにメモがはいっているのがいくつかあり、以前その古いと思われるものから、記事にしてみた。同人誌「海」はだいぶ前のものと思われる。
【「現代比較助詞考」織坂幸治】
西洋文化が、「あれか、これか」の2元論で、日本文化が「あれも、これも」の1元論とかを、「モ」と「カ」の問題で考えている。宗教的に一神教が多く、二者択一の選択で分類するのに対し、清岡満之の「二極を消す『二項同体』」の思想を知る。
たしかに、日本という国は世界的にみて、異色の文化体系をもっているようだ。自分は社会の構造や変化、革命ついての本を読むが、現在の「協同組合」の構想を考えたフランス人のフーリエ(1772~1873)は、未来予測として北極と南極が接近し、地球が温暖化するだろうとか、海水がおいしい水となるであろうとかを予測。さらにフランスから遠い日本について日露戦争(1904~1905)の始まる100年前に、ロシア人が中国への侵入すること、それによって日本人がロシアを侵略し、世界の産業界に侵略するであろう、というような予言をしている。ロシアの革命家トロツキーは、「文学と革命」で、日本を世界の闇の中に存在する国と記すなど、なんとなく気になる国のようだ。
【「帰還」由比和子】
元日本兵の昌男は、シベリア抑留生活から、ナホトカから引揚船「興安丸」で帰国してきた人物。日本での生活も、その当時のことが寝ていても悪夢として甦ることの不安を描く。
【「参考人浜野シズエの供述書」牧草泉】
殺人事件について、警察に参考人に呼ばれたシズエの供述だけで、事件の様子を読者に理解させようという試み。シズエがしゃべるだけで、事件の進行をわからせる。表現に制約を加えて、そこをいかに工夫するか、という文章技術に挑戦した意欲的な作品。
【「月蝕」有森信二】
市役所に勤めながら大学の2部に通う若い男の「私」の生活の仕事と大学での学生運動をめぐる生活を描く。全共闘に関していろいろな受け取り方をする人たちがいるものだ。そこに内面な苦悩をする佐々木という男の破滅的な男を象徴として登場させて描く。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)
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コメント
海第二期の作品について、このように丁寧に紹介していただき、ありがとうございます。
海は、少人数ながら、評論、詩、俳句、エッセイ、小説など、幅広いジャンルの作品を掲載しております。それらの表現のかたちを越え、それぞれが切磋琢磨し、向上することを目指しております。
今後とも、御指導等よろしくお願い申し上げます。
投稿: 有森信二 | 2010年1月12日 (火) 21時43分