新史料発見、「焚くほどは風がもて来る…」は良寛作
句集「発句類題越後獅子」に載った良寛の句を示す冨沢信明・新潟大名誉教授 江戸時代の僧・良寛(1758~1831)の代表的な俳句とされながら、作品の自筆が残っていないため、「他人の作では」とも言われた句について、「良寛作」とする新史料を、良寛研究家の冨沢信明・新潟大名誉教授(67)が発見した。来年は、良寛の没後180年目の節目に当たり、話題を呼びそうだ。
この句は「焚(た)くほどは 風がもて来る 落葉かな」。
火を燃やすのに十分な落ち葉は、風が持ってきてくれる――との意味で、良寛の質素な暮らしぶりがうかがえる代表作として親しまれてきた。良寛が修行を終えた後、20年ほど暮らした「五合庵」(新潟県燕市)脇には、この句を彫った碑も立っている。
しかし、同時代の俳人・小林一茶(1763~1827)が1815年に記した日記には、「焚くほどは 風がくれたる 落葉かな」との俳句があり、「良寛がこの句をまねたのではないか」という指摘も。
冨沢さんは今年9月、良寛関連の書物を収集している知人の所有物の中に、問題の句を良寛作と明記している句集「発句類題越後獅子(ほっくるいだいえちごじし)」第2巻を見つけた。句集は越後の俳人の編集で、奥付の記載から、良寛没後約1年の1832年に出版されたとみられる。
良寛の句は、問題の句を含め2作品を所収。一茶の日記は個人的なもので当時は公開されておらず、一茶と良寛が会った記録もないことから、冨沢さんは「信頼性の高い史料。良寛が一茶の句をまねたとは考えられない」と説明する。
「全国良寛会」副会長、加藤僖一・新潟大名誉教授(73)も「当時は出版に数年かかったことを考えると、編集時点では良寛が生きていた可能性が高い。編集者は良寛直筆の句を見たと考えられる」と評価する。(2009年11月19日 読売新聞)
| 固定リンク
コメント