「笑う警官」映画化 原作者、佐々木譲さんに聞く
北海道警の不祥事をテーマに描いたミステリー小説「笑う警官」が映画化され、公開中だ。原作者の佐々木譲さん(59)は「地味な地方警察の物語が、映画で描けばこうなるのかと感心しました。俳優の存在感が、小説の登場人物の違った魅力を引き出していた」と語る。1作目の「うたう警官」(後に「笑う警官」に改題)から道警シリーズは4作目となるが、「10作まで書くつもりです」とますます意欲的だ。(戸津井康之)
「実は事件が発覚する1年ほど前に、この事実を知りました」と佐々木さんは明かす。事件とは、道警が組織ぐるみで行っていた捜査費の裏金問題。別の小説に登場させる警察官を描くため関係者を取材していた時に、偶然、耳にしたのだ。「でもその時は信じられませんでした。まさかこんな不祥事に発展するなど…」
旭川中央署の不正経理に端を発した裏金問題は、その後、道警の不正の新事実が次々と発覚し、警察組織全体に蔓延(まんえん)していた闇の深さが明らかになっていった。
そんな時期、ある人物から「警察小説を書きませんか」と勧められる。
佐々木さんは警察小説の巨匠、マルティン・ベックの大ファンで、その人物が20代のころ出版社の編集者として手掛けたのがベックシリーズだった。ある人とは角川春樹さん(67)。今回の映画化ではプロデューサー兼監督を務めている。
《札幌市内のアパートで女性の死体が発見させる。女性は現職警官。札幌大通署の警部補、佐伯(大森南朋)は事件の背後に組織的な陰謀を感じ、独自に捜査を始めるが…》
「笑う警官」は最初、「うたう警官」というタイトルで刊行された。“うたう”とは警察の隠語で「自供」の意味。こちらも意味深長で味わい深い題名だが、ベックの代表作の一つ「笑う警官」に敬意を払い、角川さんの勧めもあり改題したのだという。
警察内部の闇に切り込む道警シリーズは、新たなスタイルの警察小説というジャンルを築いた。「これまでのように勧善懲悪の警察をヒーローにした小説は今後、描きにくくなるかもしれません。ただ、私はあくまで現場の警官に敬意を払って描いています」
なぜ道警シリーズを10作まで続けたいか、その理由を聞くと「ベックシリーズが10作まで続いていますからね。そのオマージュ(敬意)です」と笑顔で答えた。(産経ニュース09.11.16)
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