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2009年11月19日 (木)

詩の紹介 「舞う」 北里 美和子

紹介者 「詩人回廊」 江 素瑛
忙しい主婦ならば必ず経験する日々の「事件」である。「事件」の連続は、生活そのものである。それと、恐ろしい社会の「事件」とは関係ないと軽んじることはできない。たとえれば国際紛争などは、主婦の狂おしい厨房戦争から始まるとしても、大袈裟な話でもない。人間の悪意は、われわれが思っているより世界を揺るがしているのではないだろうか。複雑系のカオス理論では、アフリカで蝶が羽ばたく空気のゆれが、地球の気候変動に影響を与えるとか。人間の哀しき本性への嘆きとも読める。
             ☆
「舞う」   北里 美和子
風が吹いて髪が乱れる/砂埃が舞い上がる/目にゴミがはいる
信号が黄色を示す/急ブレーキをふむ/あやうく追突/うしろからクラクション/あるのよね、こんな日が
朝、冷蔵庫から卵を取り出す/ぼんやりうわのそら/するり掌から卵が離れた/予期していたかのように眺める/床に黄身が盛り上がった
灯油をこぼす/醤油をこぼす/お湯をポットに注ぐ/手元が狂い足に熱湯/アヂッ/手足が踊る/薬缶が舞う
今朝の三面記事/殴る/蹴る/埋める
叩く拳の指先の/爪の中にまでことごとく/力をいれて/哀しみが舞い上がる
 
文芸同人誌 「海」第二期第二号より(H21年10月15日)福岡市花書院

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