伊藤桂一「形と影」を雑誌「季刊文科」46号(鳥影社)が再録
「季刊文科」は毎号読んでいるが、なかなか触れることがない。ただの一読者であるから、別になにも言うことがないのだ。純文学の本来の姿はこういうものではないか、と会員には購読をすすめていたが、継続しているかどうかは知らない。
46号には、自選短編として伊藤桂一「形と影」が掲載されている。解説では、戦後、市販同人誌「文芸首都」の投稿時代に詩的小説、現代詩の小説という考えで書いたものと記している。文芸おける「詩の素」と「小説の素」との比較を考える上で、大変興味深い作品である。先ごろ同人誌「グループ桂」に北一郎が「詩人回廊」の散文を「寸編小説」として掲載したが、他の同人が「もっと詳しく事情をかかないと小説らしくない」とか、いうことだった。しかし、師である伊藤桂一氏は「まあ、いいのではないか」という評であった。そこで、あとで「伊藤先生は最近、評が甘くなった」などという話も出たが、北もその気になって、そうだね、なといっていたものだ。
伊藤先生は、山本周五郎に誰かの葬儀で、出会ったが、「あまり周囲になじまず、ぽつんとしていたね」という。編集者には、伊藤先生の小説を褒めていたという伝聞を耳にしたという。
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