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2009年10月18日 (日)

 柳美里さん 『オンエア』 著者メッセージ

(講談社『BOOK倶楽部メール』09年10月15日号)
 『オンエア』は、取材を含めると、2年半を費やした長編です。わたしの作品では、『命』、『8月の果て』に次いで長い小説ということになります。
 20代、30代の女子アナを主人公にし、テレビ業界を舞台にしましたが、特殊な世界を描いたわけではありません。読んでいただければ、きっと、「自分と似ている」登場人物が見つかる、と思います。
 というか、読者のみなさんに、これは「自分の物語」だ、と思ってもらえる小説を書けなくなったら、わたしは書く意味がない、書くのをやめます、筆を折る。
 『オンエア』に登場する3人の女子アナは、不倫、セックススキャンダル、裏切り、という大きな危機に遭遇します。そして、敗ける。でも、挫けない。
 小説は、絶望の処方箋(みたいな小説もあるんでしょうが、わたしは読みもしないし書きもしない)ではありませんが、読者のみなさんが、登場人物と共に絶望し、絶望の最中で希望を見出す過程に参加することはできます。
 いま、辛いひと、いま、淋しいひと、いま、絶望しているひとと、再起への一歩を踏み出したい、と思って書いた小説です。どうか、読んでください。  (柳美里)

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