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2009年10月11日 (日)

創作同人誌「R&W」第7号(愛知県)(1)

 【「泣きじゃくる声」松岡博】
 昭和30年頃、小学生の時に、仲間と外でいたずらをして、みんなで叱られた時に、先生に迎合して、期待に答える返事をしてしまったのが話のはじまり。いたずらをしたと教師が思っているのが堂前で、教師が「堂前の姿を見たか?」と訊かれて、その場の雰囲気で「見ました」と「私」は答えてしまう。実際は見ていない。堂前は「やっていません、やっていません」と泣きじゃくる。そのことが、「私」の記憶から消せない。
 そして、後年40歳代になって、偶然、彼の家の存在を知るが、じぶんから訪ねることは
しないでいる。すると、いつのまにか、彼の家の表札が別人のものになっている。60歳になってから、同窓会の集まりで堂前がなくなっていることをしらされる。「私」には「やっていません」という彼の泣きじゃくる声が消えることがない。このように、簡単に話が紹介でるほど、すっきりまとまった作品。曖昧さを生かして、よく小説にしたという感じ。エッセイ的な手法を活かしながら、ストリーテラーの手腕が出ている。

【「いざない」松本順子】
 警察小説の作家のところに、若い妖艶な既婚女性が訪ねてくる。作家の妻は、それを不吉に感じる。作家の作中人物が夢に出てきて、彼女はその男と交わるのだという。その後、妻の予感は当たり、作家はその女性に取りつかれ死んでしまう。中世の古典にある怪談「」の現代版である。日本の文学的な伝統の浸透の深さを感じさせる。みやびさよりも主婦感覚の話の手順や細部が何となく面白い。

【「ジープ その想念」谷澤弘昭】
 戦後、しばらくしてから朝鮮戦争がはじまり、日本は経済的な復活のきっかけとなった。その時代、まだ米兵を相手に若い日本人女性が商売をする光景があった。占領された日本の屈辱的な立場を象徴しているが、時代の空気はそれを忘れようとしている。主人公の笹澤は、少年時代に米兵と日本人女性が神社裏で性行為をする姿を目撃する。
 その光景をトラウマとして、バイクでツーリングをしながら回想する。単なる回想に終わらせないように、ツーリングの過程を描くことには成功している。目撃した風景の記憶と現在形で存在する女性が並列的な想念として意識にのぼるところが、連結力が薄いのが惜しいといえば惜しいが、バイクツーリングを面白く読ませられた。
発行所=〒480-1131愛知郡長久手長湫上井堀82-1、渡辺方。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)
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