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2009年10月28日 (水)

同人誌「文芸中部」82号(愛知県東海市)(1)

【「オールドローズガーデンB&B」西澤しのぶ】
 大変印象の深い小説であった。云うに言えない味わいがある。舞台は英国であるが、そこに登場する人たちは、ドイツ語の翻訳家、ドイツ出身のウイルヘルムが主人公、彼のなき妻が英国人、出入りする家政婦は、モロッコ系である。ウイルムヘルムが妻の亡き後、庭のバラ園を放置しておいたが、そこへ日本人が幾日かのホームステイを依頼してくる。妻がかつてしていたB&Bの活動の影響である。
 ウイルヘルムは事情を知らずに、年配の日本人夫妻を泊める。
 すると、夫妻がこの地で、かつて渡英していた娘を殺害され、その犯人が刑務者を出所するので、彼を赦す気持になったことを伝えに来たのだった。ところが犯人は、父親を日本兵殺されていてそれを赦すという。また、ウルヘルムも戦争で、敵を殺していた。
 まず、英国の風土と、日本人への敵意など、そこに住む外国人のキャラクターが自然に描かれている。クリスチャン精神に満ちた人物像が、そこによく融合されている。作者は、おそらく英国での暮らしが長く、信者であろうと推察される。ここに描かれた罪と罰、赦しの問題も理屈的には深みがないが、小説のなかではそれを身にしみるように表現。創作的ではあるが、これが小説でなければならない必然性を感じさせる。とにかく文学表現力で良質な小説である。

【「溶けてゆく街」蒲生一三】
 技術的に老練な手腕の作品。阪神大震災を経験した高齢者の、日々を生きる様子とその死を描く。かつて古山高麗男という作家が、私小説風な「私的」日常から物語を飛躍させる手法を用いていた。なんとなく、その作風をイメージさせる。震災以来、人が消えて町が溶ける。自在な筆致が、物悲しいような、庶民のあわれな味わいを深くしている。

【「花疲れ」濱中禧行】
 若き時代に、遊び心で交際のあった女性が知らぬ間にわが子を産み、成長していた話。書く楽しみと読む楽しみが半々の読み物のようだ。
 発行所=〒477-0032愛知県東海市加木屋町泡池11-318、文芸中部の会。
            (紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

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