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2009年8月11日 (火)

高城高さん約40年ぶり新作『函館水上警察』(東京創元社)

研ぎ澄まされた文体 健在
今年は函館の開港150周年。「いい時に合った」と語る高城さん 日本ハードボイルドの草創期に活躍した作家の高城高(こうじょうこう)さん(74)が、久々の新作『函館水上警察』(東京創元社)を刊行した。研ぎ澄まされた文体は健在だ。(川村律文)
 高校時代からヘミングウェーやハメットに親しんでいた高城さんは東北大在学中の1955年、進駐軍でにぎわう仙台を舞台にした短編「X橋付近」でデビュー。雑誌「宝石」などに作品を発表し、国産ハードボイルドの草分けとして大藪春彦、河野典生とともに「三羽烏(がらす)」と称された。ただ、新聞記者の仕事が忙しく、70年の短編を最後に、30年以上も筆をおいていた。
 しかし、2006年に仙台の出版社が編んだアンソロジーが注目され、執筆を再開。昨年の全4巻の文庫版全集(東京創元社)の刊行にあわせ、新作に着手した。「雑文やノンフィクションは書いていた。ワープロに向かうのはごく当たり前の作業でした」
 タイトルの水上警察署は、明治中期の「函館新聞」で見つけた題材。署の蒸気船の記事から、函館らしい警察署の活躍を通して港町を描けると考えた。「イギリスなどの水兵が街を潤し、西洋料理店もあった。街全体がモダンだった」。遊郭で羽目を外す水兵、密漁船の寄港……。新聞の逸話と、函館税関に残る公文書を読みこみ、異国情緒漂う連作短編を作り上げた。
 時代小説ながら、心理描写を排した文体はハードボイルド的。「言葉を大事にしなければハードボイルドではない」という思いから、二葉亭四迷などの作品を読みこみ、当時の言葉を会話に生かすことに注意を払った。「背景やしきたりの説明がいるから、時代小説はどうしても長くなる。心理描写までやっていられない」。こう語るのも、若い頃に表現をギリギリまで絞った経験からだろう。
 70歳を過ぎ、満を持しての執筆再開。「三十何年ぶりに時代小説を書いて、いつの間にか死んだ、というのでは格好悪い。いずれ現代ものの作品も書かないと」と穏やかな笑みを見せた。(09年8月4日 読売新聞)

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