日本ファンタジーノベル大賞の遠田潤子さん(43)
夕食の空揚げを揚げていて受賞連絡を受けた。「もう頭が真っ白……」。小説執筆を隠していた中学生の娘2人に打ち明けると、「いつも部屋にこもって、あやしいと思っていた」と祝福が。「街で自慢していいって聞くので、あわててとめました」。18年の専業主婦生活から一転、作家デビューが決まった。
受賞作「月桃夜」は、薩摩藩支配下の奄美大島で過酷な境遇に置かれた少年が、碁で名を上げ「妹」を救おうとする物語。夫のルーツが奄美だったことから島の歴史に興味を持ち、過去と現代を結ぶ悲恋を紡ぎだした。選考会でも「これだけ緻密(ちみつ)に奄美を描いた小説は初めて」(椎名誠委員)と評価された。
ボケとツッコミは自然に出来るという大阪人。結婚後、育児や母の介護に追われたが、35歳を過ぎて余裕が出来、パソコン購入をきっかけに5年前から「家事の合間に」創作を始めた。「ドストエフスキーや森鴎外のように、理不尽な何かを書く」のが目標だ。今は、本を世に問う「社会的責任を持つ怖さ」も感じている。「100年後とは言わないけれど、50年後に残る作品が書けたら」(文化部 佐藤憲一)(09年8月13日 読売新聞)
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