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2009年7月16日 (木)

芥川賞に磯崎さん 直木賞に北村さん

第141回芥川賞が磯崎憲一郎さん(44)の「終(つい)の住処(すみか)」(新潮6月号)、直木賞が北村薫さん(59)の「鷺(さぎ)と雪」(文芸春秋)に決まった。
 初めて芥川賞の候補に挙がったイラン人のシリン・ネザマフィさん(29)は受賞を逸した。
 磯崎さんは三井物産(東京・大手町)の人事総務部人材開発室次長を務める商社マン。会見場の東京・丸の内の東京会館に黒のスーツにノーネクタイ姿で現れた。「非常にうれしい。私という個人の自意識のためではなく、小説という大きな流れの一部になるために書き続けていきたい」と喜びを語った。
 磯崎作品は、30歳を超えて結婚した男の約20年の人生を描く。浮気を重ねつつ、出世していく主人公。人生における「時間の流れ」が印象づけられる。
 直木賞の北村さんはベテランらしく落ち着いた表情。「以前、山口瞳さんの作品に“直木賞待ち”のことが出てきたが、まさか自分が6回も直木賞待ちをするとは思わなかった。冗談ではなく、長い年月の間、候補に選んでいただける作品を書けたことがうれしい」と喜びを語った。
 北村作品は昭和初めを舞台にしたレトロ・ミステリー。女子学習院に通う令嬢が女性運転手と共に、失踪(しっそう)した子爵の秘密を解くなどの3編を収録。3部作として構想された「ベッキーさん」シリーズの完結編。知的で端正な筆致で、時代に忍び寄る不穏な影を描く。【棚部秀行、内藤麻里子】 ◇「知的に構築」磯崎作品
 選考委員の山田詠美さんは「知的に構築された作品。インスピレーションだけでなく、きちんと時間軸を設定し、小説でしかあり得ない言葉を考えている」と評した。
 ◇「文体に安定感」北村作品
 選考委員の浅田次郎さんは「昭和初期という難しい時代を、資料の読み込みや取材で生き生きと描いた。プロとして作風や文体に安定感があり、安心して読めた」と述べた。
 【略歴】磯崎憲一郎(いそざき・けんいちろう)さん 千葉県我孫子市出身。早大商学部卒。会社勤務を続けながら作品を発表。07年「肝心の子供」で文芸賞。08年「眼と太陽」が初めて芥川賞候補に。東京都世田谷区在住。家族は妻と2女。
 【略歴】北村薫(きたむら・かおる)さん 埼玉県生まれ。早稲田大第1文学部卒。県立高校教諭の傍ら89年「空飛ぶ馬」でデビュー。91年「夜の蝉」で日本推理作家協会賞、06年「ニッポン硬貨の謎」で本格ミステリ大賞。埼玉県杉戸町在住。候補6回目での受賞。(毎日新聞7月16日)

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