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2009年7月18日 (土)

第141回直木賞の北村 薫さん(59)

 酷な選考だった。デビュー20年。本格ミステリ作家クラブの前会長という大御所だが、この賞にはずっと恵まれず6度目の候補。今回の他の候補には、今年自ら選考した山本周五郎賞の候補者や、自分が発掘した作家もいた。「正直ホッとしました」。「遠い夢」がかなった。
 受賞作「鷺(さぎ)と雪」は、華族の神隠しなど、女学校に通うお嬢様の周りで起きる事件を追う三部作の完結編。女性視点の上品な文体で、戦前の上流階級の世界と大事件へと向かう昭和史の不気味な世相をよみがえらせた。「盤石と思っていたものもいつか崩れ去る」との思いは、日常性と時間の二つをテーマにしてきた作家の集大成だ。
 沖縄の民俗学を研究した父の影響で、本に囲まれ育った。見識の高さから文学賞の選考を頼まれることも多いが、「選ぶより、いただくほうがうれしい」と笑う。ミステリーや詩歌などアンソロジーの名手でもあり、「創作もアンソロジーも、自分でないと出来ないことをやりたい」という。
 息抜きは阪神タイガースの応援。今年は不振だが、「まだシーズンは終わってません」と穏やかな笑顔できっぱり。忍耐と不屈の人なのだ。(文化部 佐藤憲一)(09年7月16日 読売新聞)

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