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2009年7月 9日 (木)

同人誌「雑木林」第12号(枚方市)

 エッセイを主体とした同人誌なのであろうか。事務局の「あとがき」では、前号の11号は、逝去した北川荘平講師の追悼号で、今回は尾田玲子会員の追悼号となったとある。現在7人の会員が毎月の例会に参加し、文章を書くことの意味をさぐっているという。本誌は年に1回発行しているもの。
【「デスマスク」三木祥子】
 96歳の姑が老人療養型病院に入院している。三年前から入所したが、間もなく認知症になり今は個室で意識混濁の状態である。その姑のわがままさに嫁として仕えてきた日々の思い出が語られる。そのなかで亡くなった姑のデスマスクを描く。
 姑の理不尽な行為と、我が侭な言い分に苦しめられ、心を傷つけられて暮らしてきたものでないと、書くことのできないさまざまな細かいエピソードが真実性をもって語られる。
 その意味では、これから姑をもつ立場や、同じ経験をされてきた女性には、女性が、母親から姑になるという現象のある標準的な姿を知ることが出来、非常に役に立つ参考書になっている。
 筆者はこの介護における姑の身勝手さのためにうつ状態にもなったようだが、ここでは、夫が良識人で冷静に嫁と姑の関係を理解し、妻に対する心使いがあり、さらに経済的な余裕が感じられる。世間一般の嫁さんから「まだまだ、私のほうがひどい目にあった…………」という声も出るかもしれない。
 同時に、かつては息子を良識人に育て上げた姑が、もとから特別に意地悪な人間性をもっていたわけでなく、普通の母親から嫁に向けて、傍若無人なイジワル婆さんに化けてしまった様子が読みとれる。
 それにしても、通常はなかなかこのような話は、感情的になって冷静に記録できないものだが、介護生活のストレスのそのトラウマをよく克服して、冷静に記録することをしたものだ、と感心する。
 書くという行為が、自分の感情にとらわれた心境と一定の距離をとり、他人の視点を持つことによる自己客観化の効果を生むようだ。自ら精神を鎮魂させる効果があるのではないか推察される。

【「生き物にご用心」安芸宏子】
 大阪から茨城の神川という町の義妹の家を訪問する話。自分の母親の実家がやはり茨城なので、読んでいて、なんとなく地域の風土が感じられる。茨城には関東平野の中のあらゆる農作物の栽培が可能な豊穣な土地柄の鷹揚な部分と、地域の情報伝達網が独特の発達をし、隣町のことでも手に取るように把握するという明治時代以来の独自の風土性がある。書いてあることからは、そうした風土の匂いが漂うが、書いた本人にはまったくそのようなことに関心がなく、ただ羅列的に書きまくっている状態が面白い。もっと、身近なありふれた出来事をこの作者が思うように書くと、おのずと個性的な読み物になるのでないかという、天性の持ち味を感じさせる。
発行所=〒573-0013枚方市星丘3-10-8、安芸方「雑木林文学の会」

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