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2009年7月 3日 (金)

丸山健二さん新作『百と八つの流れ星』(岩波書店)、煩悩108の問答

 作家の丸山健二さん(65)の新作『百と八つの流れ星』(岩波書店)は、人間の煩悩の数だけ並べた掌編によって、生と死の鮮烈な瞬間を切り取った大作だ。(川村律文)
 自分の作品のことを、山に例えて語る。
 中編、長編になるテーマをあえて1編原稿用紙10枚の掌編に凝縮するという構想は、「十数年前から登りたいとあこがれていて、ようやく登れるようになった山だった」という。
 「108の掌編の中にはどこか自分に近いものがあると思う。たとえ悲惨な瞬間であっても、生きる力が与えられたら面白い。青臭いといえば青臭いけど、この世は生きるに値するのか、という重大なテーマに、108の疑問と答えをたたきつけてみよう、と思った」
 生きる喜び、死、絶望、倦怠(けんたい)、狂気、感動、暴力……。終戦直後から現代までを描く掌編の中で、人間だけでなく馬やタヌキ、朽ちたボートまで、一瞬のきらめきと、それを取り巻く森羅万象を鋭く切り取る。今回は出版社の資料室から古い写真や絵のコピーを借り、そこから作品へのインスピレーションを得た。「写真の傍らにあった石に目をつけたり、別なものを書いたり……。自分の頭の中のことに頼らずに、外から刺激を受けようと考えた。どんな情景でも、蟻(あり)一匹這(は)っていることでさえ、ちゃんと見れば感動がある。それを言葉でとらえるからこそ、文学は無限だと思う」
 1日目に6枚、2日目に4枚書き、3日目にそれを調整して完成する。その作業を11か月間、休むことなく繰り返した。あふれ出るイメージに10枚という制約をかけ、文体を選んで書き言葉の面白さを追究した。
 「無駄なものを省いて一分のすきもなく組み立てると、知らず知らずのうちにその世界に引き込まれていく。言葉にはそれぐらいの魅力がある。難問を解く数学者のように、異常な集中力で向き合わないとすごい作品はできない」
 23歳で芥川賞を取る鮮烈なデビュー以来、作家生活は40年を超えた。毎朝4時ごろに起床し、朝食後に2、3時間集中して小説を書く。それが終わると、庭の手入れにかかる。草取り、水まき、剪定(せんてい)……。地味な肉体労働を繰り返し、頭を落ち着かせる。「庭仕事は本当に面白いのは1割あるかどうかで、バカみたいに根気のいる仕事。小説も同じ。地道な努力をしないと」(09年6月30日 読売新聞)

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