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2009年6月24日 (水)

「ジョーカー・ゲーム」柳広司さん 吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞にクール

 センスあふれるスパイ小説『ジョーカー・ゲーム』(角川書店)で柳広司さん(41)が吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞のダブル受賞に輝いた。デビュー9年目で脚光を浴びた作家に聞いた。(佐藤憲一)
 「『ジョーカー・ゲーム』の代理人、柳広司です」――両賞の授賞式。ともに一風変わった言い方で自己紹介した。「一作ごとに文体もテーマも変え、カードを切っているので、作家性は表に出したくない」のが理由。受賞作に登場するスパイ同様、クールな黒子なのだ。
 反面、小説への思いは熱い。神戸大の学生時代は、年間400~500冊の本を読破。26歳のときから肉体労働、セールスマンなどの職を転々としながら創作を続けた。2001年のデビュー後はシュリーマン、ソクラテスら歴史上の偉人が登場するミステリー中心に10作以上発表したが、鳴かず飛ばずの苦汁もなめた。「今回の受賞が、他の作品も読んでもらうきっかけになれば」。評価の高まりに苦労人ならではの感慨を抱く。
 受賞作は、怜悧(れいり)な頭脳を持つ結城中佐が創始した、戦前のスパイ養成学校の卒業生が、諜報(ちょうほう)戦を生き抜いていく。無駄をそいだ文体が非情の世界を貫き、隠されていた真実へと鮮やかに導く。「F・フォーサイスとかもともと好きなんです。絵柄の白黒が最後にぽんと反転するミステリーのカタルシスも取り入れた」
 学生時代、ガールフレンドから薦められた村上春樹の『ノルウェイの森』の感想を、犯人やトリックの視点から話し、ふられたことがある。「僕はミステリー的に世界を見ている人間」と自己分析する。
 今でも資料以外に月20冊近く本を読む。「すごい作家の小説を読んで、打ちのめされる経験があるから、この仕事を続けていける」(09年6月23日 読売新聞)

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