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2009年6月10日 (水)

詩の紹介   「道」 関 中子

 (紹介者・江 素瑛)
この詩集は、自分で装画と挿画入れた感性豊かな詩画集である。
 掴む。掴まれる。捕る。捕らえる。人間性に様々な牢屋から抜けることはないところがある。牢屋のなかでも牢屋のそとでも牢屋である。ここも牢獄舎。このひと言で、花、枝、人、雲の漂う空間が絵画の世界と交流するように表現されている。孤独も正しく牢屋である。それを掴む、それに掴まれる。人間は深いところからも、浅いとこらからも、孤独が付きまとう。そこから抜けることがあり得ないとでも言うように。
             ☆
道        関 中子 

夏の朝 蜘蛛の巣をとりのぞきながら歩いた道も今はすっかり吹き抜けになって/ 空ばかり青く 溶けるようにはかない厚さの雲/欅の枝 何本かにその雲が囲まれ/ ここも牢獄舎である
 
紅い花も木に捕らわれ/ たどり着くこともないという言い伝いの/ 空は とても青いのねとさしさわりのないささやき話にする/ 話しすぎると重たくなって地におちるよといわれても地におちても/ 話し続けたいから話がとめられない

どくだみの木はまだ若いから身をよじって/ 葉もなく白い花もない季節 二つに割れた幹を放すまい/ 放すまいと緊張と情熱で空にかすがいを打ち込む/ あそこもここも/ いつまで続くのか/ 栗の木の残がいがとなりにある 

道よ/ 欅の木が /椿の木が /どくだみの木が /栗の木が /孤独になっていく/ ユリノキの角を曲がるときは決断をする/ 孤独とは過去のことだと

    詩集 夢現より 東京都文京区 株式会社ニットー出版企画
(詩人回廊「関 中子の庭」サイト)

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