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2009年5月 8日 (金)

同人誌「VIKING」荒波に負けず

 (待田晋哉)(09年5月7日 読売新聞) 作家、富士正晴(1913~87年)創設の関西を代表する文芸同人誌「VIKING」が、700号を迎えた。記念号に寄せた作家の福田紀一さん(79)の文章によると、自宅の書棚にある同誌は2メートル53に及ぶという。1947年の創刊から62年かけた大記録だ。
 同誌は100号ごとに毎号の執筆者を記した索引集を作る。19歳で芥川賞候補になり2年後に自裁した久坂葉子の代表作『幾度目かの最期』は、53年の47号。60年代の学生に支持された高橋和巳の『憂鬱(ゆううつ)なる党派』は59年、108号で連載が始まった。そのほか直木賞作家の津本陽、仏文学者の山田稔……。名門の歴史を感じさせる。
 一方、プロデビューの主な道筋が、同人誌から出版社の新人賞経由へ変わり、インターネットで個人の作品を簡単に発表できる時代の変化の荒波を、同誌も受ける。36人の同人は50~70代が多く、高齢化が進む。
 だが、発行人の佐伯敏光さん(61)は「物語の面白さで読ませる作品より、誠実な文章を好むのが『VIKING』の伝統です。書くことへの愛情を大切にした富士さんの精神は、今も引き継がれている」と話す。
 700号の記念例会は先月26日、兵庫県芦屋市で行われた。日本酒の一升瓶やウイスキーの瓶が目につく畳敷きの大広間で、2時間半かけて作品の論評をする。「読者に迷惑かけたら、あかんねんで」。ある出席者の持って回った文章を、同人の島京子さん(83)が、たしなめる一幕もあった。
 書いたものを肉声で批判され、ほめられる緊張感は、背筋に深く染みてくる。
 文芸春秋の「文学界」から、慶応大系の「三田文学」に舞台を移した「新 同人雑誌評」を担当する勝又浩さんは、同誌春季号で、地道に同人誌で執筆を続ける人々が、「日本文学のやっぱり一番ベースにある力だと思う」と語っている。
 <自らの存続を唯一の目的として発行されている>。「VIKING」は高らかに謳(うた)う。横風を受け、時には座礁したとしても、きっと自由気ままに航行を続けてゆくだろう。

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