写真家の森住卓さん、ジャーナリスト志葉玲さん、ボランティアの高遠菜穂子さんが、この4月に5年ぶりにイラクを訪問。その緊急報告会が22日、明治大学駿河台キャンパスリバティタワーで開催された。関連サイト「イラク・ホープ・ダイアリー」
なかでも、高遠菜穂子さんは、イラクで緊急支援活動に携わり、04年に4度目のイラク渡航の際に武装集団に人質に取られた。イラク人からは「軍隊を派遣した日本」の怒号を浴び、日本では自己責任問題として、世論と称するメディアからバッシングを受けた経歴をもつ。
高遠さんがイラク訪問したことは、ロイター通信によって、世界に19000件もニュースとして配信されたそうである。それを知った高遠さんは、また家族が日本国民の世論からバッシングを受けるのではないかと心配して日本に連絡を入れたが、日本ではその事実は報道されておらず、安心したという。ジョークで言えば、もしかしたらメディアの温情によって、日本での報道が自粛されたのかもしれない。
今回のイラク帰国報告会のタイトルは「『隠された虐殺』から5年後のファルージャ、『知られざる虐殺』のラマディをたずねて」とし、2003年以降、”スンニ三角地帯””最激戦地””アルカイダの拠点”とされた西部アンバール州が、米軍との交渉の末に、伝統的な部族の指導者たちが、自主的に治安維持にあたり、米軍が中心地域から手を引いたことで、ようやく薄氷の平安を取り戻している現状が報告された。
高遠菜穂子さんがイラクで誘拐された時に、彼女のボランティア活動の貢献を知人のイラク人が「イラク・イスラム法学者協会」のクバイイシ師に報告。「絶対に助けなければいけない」という意思を表明し、高遠さん開放の窓口となった。事件後、彼女は全国で講演し、集めた資金約3660万円をイラク支援に投じた。(志葉玲氏「FRIDEY」09.5.29記事より)。今回のイラク訪問は、地元の部族の治安組織「覚醒協議会」の招聘で実現したのだという。
この地域は米軍による大量殺戮がくり返された悲劇の地で、掃討作戦による民間人死者数は数万ともいわれるが、日常的に狙撃された市民の数は想像をはるかに越えていたという。
森住 卓(もりずみたかし)氏は、1951年神奈川県生まれ。世界の核被害を取材。1998年劣化ウラン弾被害の取材でイラクと出会う。以後、戦争前後18回イラク入りし取材を続けている。今回の報告では、米軍の無差別虐殺ぶりを世界に報道発信するジャーナリストが弾圧され169人が亡くなっている現状と、米軍が劣化ウラン弾を多用したため、破壊されたあとからは高濃度の放射能が検出されていること、ところがその弾丸の破片はまったく見つからないという。米軍が証拠隠滅のため、回収された可能性を感じるという。
◆森住 卓(もりずみたかし)=戦争前後18回イラク入りし取材を続けている。著書:『セミパラチンスク 草原の民 核汚染の50年』『イラク 湾岸戦争の子どもたち』『イラク 占領と核汚染』『沖縄戦 集団自決を生きる』(以上高文研)『私たちはいまイラクにいます』(講談社)『核に蝕まれる地球』(岩波書店).。核汚染シリーズ①『楽園に降った死の灰 マーシャル諸島共和国』②『ムスタファの村 イラク共和国』③『6脚の子牛 カザフスタン共和国』(新日本出版社)など。http://www.morizumi-pj.com
◆志葉 玲(しばれい)=1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年から平和・環境・人権をテーマにフリーのジャーナリストとして活動を開始。2002年12月~2009年4月まで計7回イラクを訪れ、2009年1月にパレスチナ自治区ガザでも取材するなど、紛争地取材を行うほか、地球温暖化対策や格差・貧困問題なども幅広く取材、週刊SPA!週刊FRIDAY、東京新聞などに記事・写真を提供。大手メルマガ配信サービス『まぐまぐ』から、メールマガジンも発行している。http://reishiva.jp/news/?id=4159
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