ほんの紹介 中川原 桂・短編小説集「招霊(おがたま)」
本書は表題の「招霊(おがたま)」のほか、「天津牙科医院(てんしんしかいいん)」、「喫茶『山帽子』」、「螻蛄(おけら)のがいつ」、「お寺の坊(ぼん)」、「担桶(たごけ)」、「文房具屋の又(また)やん」など14の中・短編が収められている。著者は1946年、三重県生まれで、会社勤務の後、中国・天津大学で2年間、日本語教師として教鞭をとり、2003年に帰国している。
なかでも中編の「永訣」は、中国の大学における日本人教師の生態や、中国社会の現状を描き、SARSの感染拡大をからめて物語にして読み応えがある。
また、日本の昔の風俗を題材に幻想的な物語にしたり、庶民の生活をリアルに活写していて面白い。どれも明解な文体で、その作品も内容がはっきりして読みやすくわかりやすい。洒落た堅表紙でありながら図書コードもなく自費出版に徹したものになっている。(発行所&出版社ブイツーソリューション社、〒466-0016愛知県名古屋市昭和区長戸町4-40、℡052-799-7391.定価1750円)
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