詩の紹介 「初夏」 作者 関 中子
(紹介者 江 素瑛)
迷わないで、やさしい風、吹いておくれよ。あっという間に夢の萌える「春」は過ぎた。惜しまないで、やさしい言葉、掛けておくれよ。風は気ままな心で、吹いたり、止まったりしそうだ。私の見ている夢をこわさないで。言葉の針は蜂のひと刺し。これからの夏に、風はどこに吹くのか。季節の移ろいに、心が揺れる日本人らしい感覚をとらえて鋭い。
☆
初夏 関 中子
迷わないで/ やさしい風
夕暮れの後には夜が/夜の後には朝が そして昼が/ それらは迷わないから
迷わないで/ やさしい風
一言がどのように聞こえるか/ 心がいかに人を食べるか/ その食べる音のすさまじきこと
迷わないで/ やさしい風
夢がかたわらを通り過ぎてゆくのか/ 人が通り過ぎてゆくのか/ 夢を人は見る
迷わないで/ やさしい風
関 中子詩集「シジミ蝶のいる日々」より(09年1月「竹林館」)
(参照:「詩人回廊」「関 中子の庭」サイト)
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