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2009年1月 8日 (木)

同人誌「楔(くさび)」第25号(横浜市)(1)

 本誌は、特集「日本が好きか」が組まれている。この意見を読んで、改めてどうのようにすれば、より住み良い日本になるか、もう一度考えていただきたい(赤羽文雄編集人)という企画。それぞれの実感が語られ、大変内容の濃いものになっている。
 このような企画をしたのには理由があるようだ。編集後記によると、会員が12名に減って、原稿が数本しか集まらないとある。また、人数が減ると会費や掲載料の負担が大きくなり、それがさらに原稿の集まりを悪くする。経済のデフレスパイラルのように、縮小均衡への悪循環が始まるのだ。近く会費や掲載料の見直しをするという。同じ問題は多くの同人誌に起きていることなのではないだろうか。
【「日本が好きなのだが…」赤羽文雄】
 勤勉、親切、義理人情などの国民性、豊かな自然など日本が好きな特長をあげて、不満なのは政治のリーダーシップの不在だとする。最近の日本の傾向は、あまり好きになれないようだ。
【「わたしの好きな日本」桂路石】
 いま80余年の人生をかえりみる。アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランドと世界を旅してきたが、それも、旅が終われば、やがてわが家へ帰れるという安堵感が心底にあるからこそ、見るもの聞くものが楽しいので、どこにも帰る場所(母国・祖国)がない、いわゆる根無し草ならば、楽しいどころか、いろいろ見学し、おいしい物を食べていても、絶えず不安につきまとわれ、旅が楽しいはずはない、とする。ただ、現代の日本が「暖衣飽食で礼節を知る」の精神と逆の方向に向かうのではないか、と危惧している。
【「私の好きな日本」高取清】
 30年ごろ前に、イギリスに居た時に、日本で2年間過ごした英国人に声をかけられ、日本人は大変素晴らしい国だ、と賞賛され厚い待遇を受けた記憶を語り、大変に日本を誇りに思った、とする。これからもそのような高い評価を受ける国にしていきたいという。
【「日本が好きか」青江由紀夫】
 函館に38年間暮らしたが、北海道にアイヌ問題があるものの、それほどの対立もなく、独立の運動もなく、紛争にならないところであるという。新興宗教としての大組織の創価学会もあるが、北海道でも東京でも幹部の人々は紳士的で友好的であるという。筆者の実家は広島で、浄土真宗西本願寺派・正満時の分家であるとする。ある程度、社会的平等が保たれ、格差は少ないほうではないかとし、年金、平和と防衛のためのしっかりした政策をとればなお良しとする。
【「私の好きな日本=鴨立沢=」衣川遊】
 筆者は、神奈川県湘南の大磯に住んでおり、そこに「こころなき身にもあはれは知られけり 鴨立つ沢の秋の夕暮れ」と詠んだ西行法師の住んだといわれる草庵「鴨立庵」があることを知る。こうした情緒豊かな地域のあるところ愛する気持を語る。
【「私は含みのある美しい日本語と桜の国で育まれた『おもてなし』の日本文化が好きだ」武田修一】
 まさにその通りのことが書かれてある。上野公園の花見に行ったところ外国人も交じって、平和な光景が繰り広げられ、日本の素晴らしさを実感したことを述べる。

【小説「赤い袋」衣川遊】
 草間の友人、小西は長い闘病の末に、しまい身を刻んでの治療を試みて亡くなる。草間はその間の小西の苦しみ、その家族の苦しみを思うと、自分の身に当てはめて夜眠れなくなる。そして医師である岡田に、いつでも、すぐ死ねる毒薬が欲しいと頼む。岡田はノイローゼだからそのようなことを言うと、相手にしない。しかし、草間はいつでも毒薬を持っていれば、安心するのだから、としつこく頼む。あまりに度重なる願いに、岡田は秘密の毒薬を渡してやる。
 その毒薬を母の形見の赤い袋に入れた草間は、それをいつ飲むべきか考え、毎日を死と向き合う日々を送る。考えに考えた末に、草間はその赤い袋を捨てる心に到達し、捨ててしまう。それから、岡田医師の渡した毒薬はただの風邪薬だったことを、読者に知らせる話。
 このように簡単な荒筋が示せるのは、短編として優れているからである。また、話の重点に草間が毒薬をもって、いろいろ思いめぐらすところにおいていて、まさに小説としてこだわって書くべきところが書かれ、余分なところは省略しており、ムダがない。その点では小説の形式を正統的に持った短編として、見本になるところがある。
「楔」同人会事務所=〒230-0063横浜市鶴見区鶴見2-1-3、鶴見大学内、前澤担当。

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